ひみつのキスをして?

□君の声が頭から消えない
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「ふーん、それで抱かれちゃったわけだ」


「違う!そんなんじゃないから!」



思わず大きい声で反論したら
先輩ににらまれた。



ランチが過ぎた後のお店はお客さんが途切れる時間帯で、

わたしはテーブルを拭きながら
昨日あったことを眠たそうにレジの前に座るヒョンスンに話していたところだった。



「で、どうだった?良かった?」


「何が?」


「ドゥジュンとシてみて」


「だからねぇ…」



思春期の女子みたいにキラキラした目で見つめられると、
この人の性別が時々わからなくなりそうになる。



「だからなんにもなかったの」


テーブルを整えてヒョンスンのいるレジの向かいに立つ。


なーんだ面白くないの。
そう言って雑誌をペラペラとめくる彼の声は本当に退屈そうだ。



「あたしだってちょっと期待したんだよ…」


さすがに抱きしめられた時は、
もしかしたらあたし、
このままドゥジュンとそうゆうことになっちゃうかもって焦ったのも事実。


一応今フリーだし別に何かあっても問題ないよね。

なんて変な確認までして、
ちょっと待ち構えていたあたしが馬鹿みたいだった。



「あたしって女として魅力に欠けるのかな」


「え名無しさんが?」


「うんあたし」


「別にそうゆうわけじゃないと思うけどなあー」


「そう思う?」


思いがけない返事に
ふあーっと大きく伸びをする
ヒョンスンを見つめた。



「うんだってさ名無しさんって格好とかも女の子ぽいし、話し方も可愛いし、ちょっとおっちょこちょいなとこもあるし。男だったら放っておかないんじゃない?」


「ヒョンスンそれ誰かの受け売り?」


「んー、まあそんなとこ」


「そうだよね…」


「あ、でも、本当のこと言うと、名無しさんのこと好きかもって思ったことあるよ」



「え?今なんて…」



あたしが話したのと同じくらいに、
ヒョンスンはキッチンにいた先輩に呼ばれて、
奥へ行ってしまった。







君の声が頭から消えない
(あたしの中に残るのは、)
(もやもやした気持ちと、)
(変に速い心臓の鼓動だけ。)
















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