MBLAQ

□時間よ、止まれ。
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「結局、あいつのことが忘れられない。悔しいけど、そうなんだ」



沈黙に耐えられなくなって、
携帯を開いたら、時刻は午前2時半。

もう大分いろんなことを話しすぎたなと思ったけど、
案外時間は過ぎていなかったような気がした。



もう何回同じ歌聞いたんだろう、
そう思うくらい、
カーステレオから聞こえる歌は、

去年の夏くらいによく聴いていた歌。



わたしは、去年の夏からずっと、
隣で窓の外を眺めている、
この人のことが好きだったんだと思ったら、

なんだか、自分が惨めに思えた。


わたしがどんなにどんなに
彼を好きでも、

彼の中には、ずっと変わらずに
好きな人がいる。




何人か仲間でご飯を食べに行った帰り、
わたしを送ると言ってくれた彼に、
無理を言って少し話すことにした。


お互いの恋愛の話になって、
軽い感じに
恋人は作らないの?
と聞いてみたら、


スンホは、少し黙ってしまった。



「そうゆう人がいてくれたらうれしいけどなあ、」


作り笑いみたいな笑顔を見せたスンホは、

お前こそどうなんだよ、
なんて冗談っぽく言うから、



「どれだけ好きでも、恋人にはなれない人に恋してるの」

と言ってみた。




スンホは、わたしを見て、
次の言葉を待っているようで。

でもわたしは、これ以上何か言えば、
涙が溢れてしまいそうで、
ただ、少し曇ったフロントガラスを見つめるしかなかった。




「名無しさん」



「なに」



「なんか似てるよな、俺達」



ぽつり、とつぶやいたその一言は、
わたしに言ったのか、
独り言なのかわからないような
小さな声で。


なんて答えたらいいんだろうと
少しだけ考えて、
でもうまい言葉は見つからないから、

そのまま、スンホを抱きしめた。


なにすんだよ、とか冗談みたいに
突き返されると思っていたのに、


びっくりするくらい普通に、
まるで、恋人にするみたいに

優しく、抱きしめてくれた。






「ごめん、俺」


「………」


「名無しさん、キスしてもいい…?」


「え?」



顔を上げた時には、
唇がもう重なっていて



全身の熱が急に上がっていく感じがした。


虚しさとか、淋しさとか、
そうゆうものでいっぱいだった
わたしの心が、全部満たされていくような、

そんな気持ちになった。





「好き」


「俺でいいの?」


「スンホだからいいの」



強く抱きしめられた腕の中で、
つぶやくように言ったら、


返事の代わりに、
キスで唇を塞がれた。






少しずつ、少しずつでいいから、
幸せになれなら、

君が幸せに近づけたらいい。

その隣で、わたしも一緒に笑顔になれたら、もっといい。


わたしにとって、それが幸せなんだ。












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