MBLAQ

□その唇を塞いで
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「仕事忙しいから、明日は会えない」


仕事が終わって、
真っ先に携帯を開いて、
一番待っていた相手からのメールの返事を見たら、
そんな素っ気ない文が綴られていた。

最近、断られるのには慣れてきてたし、
明日ももしかしたら無理なんじゃないかって、心のどこかで思ってたりもした。

でも、やっぱり期待してて
明日のために
何着て出かけよう、とか
メイクもいつもより頑張っちゃおうとか、
いろんなこと考えてた。


メールを読み終わった時、
わたしは今週、
何のために頑張ってたんだろう、

そう思ったら、涙がこぼれてしまった。




「名無しさん」


後ろから聞こえた声。
すぐわかった。


なんでなんだろう、
いつも、つらいときは、
近くにいる気がする。




「どうしたの?」


「いや、別にジュンには関係ないもん」


「なんかあったんでしょ?彼とケンカとか?」


なんでこうゆうときだけ
直球なのっていうくらい勘が冴えてる人だよね、



「そんなとこ、かな」


「じゃあ、俺と出かけようよ」


「え?」


「ほら、行こう」


ジュンは頭が整理できてないわたしを無視して、手を握った。


握られた手の力は強くて、
簡単に離せない。




「なんか、俺と名無しさん、恋人っぽくない?」


「そうかな」


「そうだよ」


「いいかもね、ジュンが彼氏とか」


「でしょ?」


ジュンは自信満々の様子で言ってたけど、
すぐ、照れたみたいに俯いた。



「自分で言って照れてる」


「うるっさいな、まんざらでもないくせに」





つないだ手の力が少し強くなる。
私たち、
素直じゃないだけだったのかな、





「名無しさんはもっと甘えたほういいよ」


「なんで」


「一人で全部抱えるからさ、辛かったら辛いって言わないと」


「………」


「ほら、辛いときとか俺に抱き着いてきてくれたら、受け止めるからさ」


「イジュンの変態」


「真面目に言ってんのに」





ほんとは、嬉しくて、
泣きそうだった。


わたし、誰にも言えなくて、
彼には嫌われないようにって気を遣って。


そんな毎日が苦痛になってた。




「どこ連れてく気なの?」


「どこだろう、俺の部屋、とか?」

「もしかして、誘ってる?」


「違うって!」


「バレバレだって」


ちょっと落ち込んだ様子のジュンは、


だって、仕方ないだろ
好きな子が彼とケンカしたって泣いてたら、
男だったらみんなそう思うよ


小声で文句みたいに言った。



「ねえ、ジュン?」


「なに」


「あたしのこと、もらってくれる?」


「えっ、」


ジュンは予想外だったみたいな顔をして、わたしを見た。

きっと終わるとわかってた。
彼がわたしに興味がなくなってくのを感じて、
わたしも、いつの間にか、彼じゃない人のことを思うようになってた。

そう、目の前のこの人のこと。




「あたし、今日はもう、ジュンのものになっちゃいたい気分」


「そんなこと言われたら、我慢できないから」




ジュンは突然わたしを引き寄せて、
キスをした。




その唇を塞いで
(君が悲しむ言葉は、もう言わせない)

















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