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□まぁ、いっか
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俺には苗字名前と言う、幼なじみがいる。

「はぁー」

うっとり、とした表情で彼女は、机に広げたノートを見つめている。
彼女のノートには、10年前の新聞記事や、雑誌を切り取ったものが所狭しと貼ってある。

「またか、」

俺と同じ様に少し離れて彼女の様子を見ていた南沢が、そう呟いた。

「音無先生、今日も素敵だったなぁ…」

「苗字はホントに音無先生、好きだなー」

車田が彼女にそう言えば、振り返った彼女は当然!と胸を張った。

「なんたって、あのイナズマジャパンのマネージャーだったんだもん!ホント素敵!!」


キラキラと顔を輝かせる彼女は、10年前、少年サッカー世界一になったイナズマジャパンの大ファン。

「そう言えば、サッカー部、監督代わったんでしょ?どんな人?」

彼女が何の気なしにそう言えば、南沢が、まだ言ってなかったのか、と肘でつついてきた。

「苗字知らないのか?」

「うん」

「じゃあ、聞いて驚くどー。なんと、あの、円…」

俺は慌てて天城の口を両手で塞ぐ。


「太一?」
「三国?」

名前と車田が驚いた表情で俺を見上げる。

天城の口を塞いだ理由は、名前が、イナズマジャパンの大ファンで、その中でも、円堂守が、大好きだからだ。

「三国、天城死ぬぞ」

南沢に言われ、ハッとして天城を離すと、苦しそうに噎せていた。

「す、すまない」

「ったく、天城も車田も空気読めっての」

恐らく、南沢はもう気付いているのだろう。
俺が何故、名前が円堂守の大ファンだと知っていながら、教えなかった理由を。


「おら、部活行くぞ」

そう言って、南沢は車田と天城を引っ張っていく。

「あ、私も行く!実際に見た方が早いよね」

「だ、ダメだ!」

立ち上がった彼女の腕を掴んで止める。

「なんで?」

「ダメなものは、ダメだ!」

様子を見ていた南沢が、ダルそうにこちらへ戻ってきて、名前に何か耳打ちした。

「え、ホントに?」

何を聞いたのか、名前驚いて目を見開いていた。

「あぁ。だから、来るんじゃねーよ」

「うー、わかった」

「ん、ほら、行くぞ三国」

頷いた彼女をみて、南沢は俺の背を押した。
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