彩加のひとしずく(更新中)

□壱
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◇◆◇


通称『リチャードゲーム』、その正式名称はリチャード・ロウゲームというらしい。

 コックリさんのようなものかと思ったが、それとは異なるとルーシィは語る。

 昼休みの喧噪から離れた屋上の一角に呼び出され、ルーシィと彼女の護衛を自称するロキとの三人で昼食をとる。

 軟派な印象の強いロキだが、昔馴染みのルーシィがなにかと厄介ごとを引き寄せる(彼に言わせればナツがその厄介ごとの最たる例らしい)ので、昔からサポートしてきた実直さをもつ。

 今回の調査は失踪者が三人もいるということで、彼女の傍を極力離れない心づもりらしい。

 甘そうな卵焼きを飲み込んだルーシィは、弁当の中身を狙うナツを足で押さえながらゲームについて説明する。こう見えて彼女もれっきとしたお騒がせクラスの一員だ。

「リチャードゲームは簡単よ。コックリさんとは違うけど降霊術って意味では同じで、形としては一人かくれんぼに近いって私は思ってる。特徴は、このゲームで呼び出すのが霊じゃなくて悪魔だってこと」

「悪魔ぁ? なんでそんなモン呼び出すんだよ、普通妖精とか天使だろ」

「今この学園でちょっとしたブームなんだけど、儀式をした子達は願いを叶えてくれる神様だって聞いてるの。調べたら流れてる噂も大体そんな感じね。でも儀式のやり方が違う」

 そうでしょ? そう話を振られてロキが肩をすくめた。彼はこう見えて教会の息子で、そういった話に造詣が深い。

 今までキャラじゃないと嫌がっていた知識が、こんな形で役立って複雑極まりない顔をしている。

「深夜の十字路の真ん中に一人で立ち、鳥のキモから流れる血をまく。その地面を掘り、キモを埋めて絶対に誰にも見られないように、振り向かずにその場を去る。これは魔法陣も詠唱も必要のない簡単な黒魔術だよ。悪魔を召喚して願いを叶えてもらうためのもので、多分リチャードゲームはこれを学園版にアレンジしてるんだと思う」

 そもそも鳥のキモとか絶対にやらないでしょ。隣で気味悪そうな顔をしているルーシィを見ると、女性徒にはなおさら抵抗があるだろう。

 鳥のキモと口走っているとは思えない平静さで、ロキはサンドイッチの最後の一切れを呑み込んだ。

「真夜中の十字路を、廊下の十字路に。鳥のキモを絵具で赤くそめた羽根に。廊下に羽根を埋めるわけにはいかないから、そばにあるロッカーに隠す。羽根じゃキモの代用にもならないけど、装飾用として売ってる白い羽根とかだったら、天使のものを赤く染めて踏みにじるってことで十字路を汚すことはできる。十字路は十字架を連想させるから、多分みんな噂を信じて――って、わかるかなナツ」

「日本語でしゃべれ」




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