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□第四章 悪魔の島
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 どこまでも、水平線が続いている。

 小さな船のへりに肘をつき、グレイは深いため息をついた。


「なーんで、こうなるかねぇ」


 本当なら、今頃自分は妖精の尻尾のメンバーと交流を深めているはずだったのに。

 なにが悲しくて、こんな広い海に連れ出されなければならないのだ。

 グレイは肘をついたまま、その原因を作った男を横目で睨んだ。


「ぅおおぇええええ」

「さっきから汚ねーんだよてめえ!」

「ん゛なっ、ごど、うええええ」


 グレイの悪態に反応したナツは、すぐに船の外へ顔を戻した。

 彼はどうやら乗り物に弱いらしく、海に出てからずっとこの調子だ。

 その光景はいつものことらしく、同乗者のルーシィとハッピーは見向きもしない。


(なんだこのメンツ。だいたいルーシィって誰だよ、最近ギルドに入ったのか?)


 以前妖精の尻尾についてのデータを作った時、彼女の名前はなかった。

 フリーの魔導士としての名声もないため、新人魔導士であるか、とるにたらないレベルであるかだろう。

 そのルーシィという金髪少女に、ナツの相棒のハッピー。

 彼ら三人と、グレイはある島を目指している。


「オッサン、ガルナまであとどんくらいだ?」


 オールで水をかいていたボボという男に問いかければ、特徴的な丸い目がグレイを見つめ返してくる。


「もうじき着く、心の準備をするといい」

「心の準備?」

「あの島に行くということは、君たちの身にも禍がふりかかるということだ」


 語りながら、ボボは目の前の海を指差した。

 導かれるまま目を凝らすと、かすかに黒い島陰が月を頂いて浮かんでいる。


「本当に君たちにこの呪いが解けるのかね?」


 港から出港するとき、ナツがどの漁師に頼んでも船を出してもらえなかった。

 どんなに屈強な男でも、行き先がガルナ島であるというだけで顔を歪めてしまう。

 だが、このボボという男は違った。依頼主が魔導士だと知ると、態度を一変させて乗船を引き受けてくれたのだ。




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