頂き物2

□春空にゃんこ
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[春空にゃんこ]


 自分の恋人は猫の様だと、ナツとヒビキは思う訳である。
 慣れない人にはツンと澄まし、クール振って尻尾を振る事はない。けれど本当は甘えたの寂しがり屋で、心の内は静かだけれど熱い意思を秘めている。心根の尻尾を掴めば毛を逆立て牙を剥き出しに、鋭い氷の爪で引っ掻いてくる程警戒心が強い。慣れると其れこそ、猫の様な気紛れさで擦り寄っては離れ、こちらを翻弄してくれる。面白い事楽しい事が大好きで、好奇心も探究心も旺盛。気付けば恋人の知らない所に迄フラフラと行ってしまう。そんな所も可愛いけれど、矢張り心配であり面白くないのが恋心と言う奴だ。
 マグノリアの街にてダブルデートなる物をしていた四人だが、氷の兄弟弟子は物の見事に恋人を放置していた。其の一種のプレイかと思う程の黙殺振りに、置き去りのナツとヒビキは揃って溜息を零した。扱いがぞんざいなのは悲しい哉、今に始まった事ではない。
 グレイとリオンは、蕩ける笑みを浮かべて彼女に触れていた。
 「お前、ホントに美人だな」
 「声も可愛いな。あぁ、そんな目で見るな…もっと触りたくなるだろう」
 「あ、リオンずりぃ。俺にも抱かせろよ」
 リオンに抱かれグレイに撫でられ、彼女は心地好さそうににゃあんと鳴いた。甘える其の声に、兄弟弟子は頬を赤らめ恍惚と笑みを浮かべた。そんな彼等にときめき色めき胸キュンするのは致し方ない事である。何と言っても恋人なのだ。例え優先順位が兄弟弟子のみならずギルドを同じくする聖十の魔導士やS級の親父より低くとも、今現在に至っては然る美人に負けていようとも、恋人と言ったら恋人なのだ。
 二人に愛でられている美人は、心地好さそうに喉を鳴らしては擦り寄り、舌先で其の肌を擽っている。人馴れしている彼女の首には桜色のリボンが巻かれ、彼女が野良ではない事を示していた。艶やかな三毛の毛並みやガーネットのリボン留めを見る限り、中々裕福な御家柄の様だ。
 「なぁリオン、俺も抱っこしたい」
 「…もう少し」
 「さっきから其ればっかじゃねぇか」
 彼女を独り占めに抱き締めるリオンに、グレイは拗ねた子供の様に口を尖らせた。普段はそんな表情に苦笑を浮かべる筈の兄弟子は珍しくも反応を返さず、頬を舐める彼女の額を撫でている。ナツとヒビキは互いの恋人の子供の様な無邪気さに、バシバシと肩を叩いては背中を殴っていた。大きな図体をして全く、可愛いと言ったらない。
 むぅと眉を顰めたグレイは、良い事を思い付いたと言う様な笑みを浮かべた。少しばかりあくどい其の笑顔に、リオンは警戒する様に彼女を抱き寄せた。
 「詰まり、こうすりゃ良いんだよな」
 自己完結するグレイは素早くリオンに飛び掛かり、其の腕の中の彼女ごと抱き締めた。押し潰された彼女は当然、ふにゃあと悲鳴を上げて二人の間から逃げ出した。残念そうに大仰な溜息が二人の口から零れ、そんな表情も又可愛らしいと、ヒビキは頬を緩ませた。ナツはといえば、様を見ろと言わんばかりに鼻で笑っていた。矢張りと言うか何と言う可きか、小さな彼女に嫉妬していたらしい。
 なぁおと甘える様な声に視線を落とすと、美人がヒビキの足元に擦り寄っていた。美人に擦り寄られて悪い気はしないヒビキである。柔らかな笑みを零し、甘える彼女を抱き上げた。顎を撫でれば彼女は気持ち良さそうに目を細め、戯れに頬を舐めては愛らしく鳴いた。確かに美人だと、ナツも其の毛並みに手を伸ばした。
 「あー振られちまった」
 「美人のツーショットだな。眼福」
 頬を寄せ合いクスクスと笑う二人は猫の様に思わせ振りだ。ナツは彼女に伸ばした手を留め、ヒビキは彼女を撫でる手を止めた。兄弟は笑みを艶めかせ、行儀も悪く四つん這いで二人と彼女に近寄った。グレイも、珍しい事にリオンも胸元の開いた服を着ていた。緩い生地と肌の空間から覗いた其れに、其れこそ猫ではないが喉が鳴った。
 リオンがヒビキの腕から彼女を掬い取り、グレイは彼女の毛並みを優しく撫でた。固まっている恋人に視線を遣ってから、二人は蟀谷を合わせてクスリと一つ、小さく笑った。
 「にゃあ」
 そう鳴いたのは果たして、彼女か、グレイか、リオンか。
 何はともあれ、ナツとヒビキが狼なのは、今に始まった事ではない。






お礼

絳桃さんに、お誕生日のお祝いで頂きました…!
これを見て悶えない人なんていないですよね!? くっそ、なんですかこの可愛い子達ぃいいい!(ごろんごろん

四つんばいなりオンとグレイに鼻血ふくかと思いました。というかムラッってしました(他に言い方はないのか
全体的にネコのような氷兄弟、もうほんと可愛いし艶っぽいし色っぽいしエロイ!←
「美人のツーショットだな。眼福」というセリフに、「眼福なのはおまえ等だよぉおお!」と叫びそうになりました。眠気も吹き飛ぶわ。

素敵な作品を、ありがとうございました(;△;)

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