single story

□silver hear
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指先で、サラサラの黒髪をすいてみた

高く一つに結われている髪はクセがなくて、指は引っ掛かることなく滑る

久しぶりの2人重なった休みは、こうして神田の部屋で静かに過ごすことが多い

「…いいなぁ…」

「…?」

本の文字を追っていた視線がこちらを見、視線だけで何が、と聞いてくる

「…僕も、こんな綺麗な髪が良かったです」

大切な人を失った哀しみから白く染まったこの髪は、コンプレックス以外の何でもない

それに比べ、彼の髪はこんなにも綺麗で美しい

羨ましいことこの上ない

神田は本をぱたん、と閉じて僕を見た

そして、ゆっくりと、その手が僕の頭に降りて、そのまま頬まで撫でられた

神田の手は好き

大きくて、暖かくて、優しくて、安心する

「俺は」

「え?」

「俺は、お前の髪、綺麗だと思うがな」

「…白いのに?」

「光に当たって白銀に見えるときもあるぞ。それに」

髪をすいていた手が後頭部を覆い、そのまま神田の胸に引き寄せられた

そして耳元で

「この髪含め、お前は俺の特別になったんだから、お前が自分を嫌いじゃつまらない」

「っ」

サラリとそう言った神田

「…神田が」

「?」

「…神田が、この髪好きなら、僕も、ちょっと好きになれそうかもです」

そう言えば、神田は満足気に笑う

「…そうか」

「はい。でも、やっぱり神田の髪の方が好きです」

「…さっきから髪髪って、髪だけかよ?」

少し拗ねたような声色が聞こえ、僕は密かに笑った

「拗ねてる?」

「うるさい」

一層強く頭を胸に引き寄せられた

「馬鹿なこと、言わないでください」

僕だって、

「神田が好きだから、この髪も好きなんです」

「…なら、いい」

きっと、
君が僕を好きだと言ってくれるから
僕は自分を好きでいられるんだ


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