single story

□embrace
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時々、とてつもない不安に、襲われる時がある

それは任務で愛しいあいつと離れている時はもちろん、今にも唇が触れそうなほど近くにいるときもだ

儚いくらい白い少年

いつか、何もなかったかのように自分の前から消えてしまうんじゃないか

そんなことを思うことがある

「神田?」

声をかけられて顔をあげると少年がこっちを見ていた

「どうかしましたか?」

「…お前は、」

「はい」

「お前は、何を見ているんだ」

少年はきょとんというような顔をして、

「神田を見てますよ?」

と当たり前のように言った

「っ」

「え、あれ?何か違った?ぇと…」

いつも俺の心を満たす言葉をくれるこいつ

「モヤシ、来い」

「アレンですけど…」

両手を広げた俺の胸におずおずと収まる少年を抱き締めた

「なんか、今日の神田はちょっと変です」

「うるせぇよ」

「あ、いつもの神田だ」

なんて、愛しいんだ

「モヤシ…」

「アレンです」

「いいんだ、モヤシで」

「もう…、神田だけなら別にいいんですけどね」

また心臓が跳ねた

「このバカ」

「えぇ…いきなりバカって」

困ったような笑みを見せる少年はいつもより大人びて見えた


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