ショート

□PUMPKIN
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「静雄いいもんやるよ」
「何すか?」
静雄に両手を出させ手の平にバラまいた。
「チョコっすか?」
「おう。もうすぐハロウィンだろ?こんぐらいしかやれねえけど」
「そんな…ありがとうございます」
トムからの贈り物であればなんでも喜ぶ静雄。深々と頭を下げた。
早速貰ったチョコを口の中に入れた。
「……カボチャ味?」
「ハロウィンだからな」
「…うまいっす」
食べたことのなかった味に驚きながらも味覚は満足したようだった。
「さーて今日も仕事頑張んぞ」
「はい」
トムの気合いも入り仕事に差し掛かろうと歩みを進めた時だった。
「臭うな…」
「静雄?どうかしたか?」
「臭いんすよ、この近くに絶対アイツが」
「それって俺のこと?」
「…っ、」
真後ろから大嫌いな奴の声が聞こえ額の血管が浮き出る。
「いぃざぁやぁあ!!!何で手前がここに居やがる!?」
「そんなの仕事に決まってるじゃん」
「ならさっさと済ませて失せろ!!今すぐ消えろ!!」
「そんな殺気立てないでよー。今日は機嫌がいいからこのまま帰ろうと思ったのになー」
「ならさっさと消えろ!!」
「そんなに言われたら帰りたくなくなるんだけどー」
「うぜえ…、」
臨也はポケットに手を入れ何かを取り出そうとした。静雄はナイフだと判断し戦闘態勢に入った。
「はい」
取り出したものはナイフとは程遠い、臨也には似合わない物だった。
「あげる。好きでしょ?飴」
「……好き、だけど…い」
「ならあげる、俺甘いの苦手だし、あー大丈夫、何も仕組んでないし毒が入ってるわけでもない」
押し付けられつい持ってしまった飴、いらないと断ろうと思っていたので臨也に突き立てた。
「手前からなんか貰えるか」
「いいから貰ってよ。この飴いつも食べてるじゃん」
そうそれは静雄がよく食べている棒が付いている飴。タバコがなかったりすると代用でそれを口に含んでいた。
「…何で」
何で手前が知ってるんだよ。
「仕事あるから行くよ。またね」
「あ…」
結局騒動が起きることなく臨也は去って行った。飴も静雄が握ったままだ。
「珍しく何事もなかったな、静雄」
「へ、ああ…そうっすね」
「それ、どうすんだ?」
臨也から受けとった物、本人は大丈夫と言ったが信用ならない。
「あとで捨てます。臨也からのもんなんて怪しくて食えません」
「そか?」
ポケットに突っ込み歩き始めた。静雄の表情はトムから見えない。
ごみ箱、そこにあんだけどなー
トムは心の中で呟き静雄の隣を歩いた。





「好き、か……本当ムカつくなあ」
臨也が決して聞くことはない言葉を飴一つであっさりと聞くことが出来た。それに腹が立って仕方なかった。
「いつ俺に向けて言ってくれるんだろうねーシズちゃんは…」
早く堕ちればいいのに。




PUMPKIN


(捨てる、って言ったものの勿体ないよな、でも食べるのも勿体無い…じゃない、、不安だし…とりあえず部屋に置いとくか)




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