・*Hailstorm*・ショートストーリー
□夏の輝き
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「ねっ、豪炎寺くん!
夏休みの間、ウチの旅館でバイトしない?」
絵理香が突然そう言ってきたのは、
終業式の前日のことだった。
「バイト?おまえの家って、旅館だったのか?」
俺はそんな話を聞いたことがなく、
首をひねる。
絵理香は「ちがうちがう」と首を振った。
「そうじゃなくて!
あたしのおばあちゃんちが旅館なんだ。
長野にあるからちょっと遠いんだけどさ、
男手が足りなくて困ってんだよね!
ダメかな?」
「……」
正直、旅館のバイトというのは興味がある。
だけど、引き受けたらサッカーの練習もできなくなるんじゃないだろうか?
そんな俺の気持ちを見透かしたように、
絵理香はニッと笑った。
「サッカーのことでしょ?
だいじょーぶっ!
旅館の近くに広いグラウンドあるし、
地元の中学、意外と強いんだよ?」
長野の強豪か…
俺は気づいたら首を縦に振っていた。
「やったぁっ!」
絵理香は飛び上がらんばかりに喜ぶ。
俺はそんな笑顔を見られただけでも
引き受けてよかったと思った。