…薄桜鬼長編…
□*トリップした先には.2*文久四年
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文久四年、一月
幕末に来てもう三ヶ月が経った。
最近は屯所の周りなら、と外に連れていってくれるようになった。
近藤さんを始め、みんなお土産を買ってきてくれたりするし、平隊士とも幾らか話をするようになった。
ただ、私は"土方さんの親族"という事になっているので年が近い隊士ともフレンドリーに会話はできないが。
このまま月日が流れて、ここで暮らしていくのも悪くないと思っていた。
イケメンに囲まれるのも、生活もに慣れてきたというのに……
季節が流れるにつれて、水は冷たくなり皿洗いや洗濯が辛くなってきた。
蛇口を捻れば、すぐお湯が出る…なんてあり得ない時代。
そもそも水道が無いし。
部屋が寒い。
暖房がない。
東京育ちの私には、夏の蒸し暑さや冬の雪が積もるほどの寒さは経験した事がなかった。
エアコンもファンヒーターも無い火鉢だけの生活。
自分は本当に便利で恵まれた時代で産まれてきたのだ、と改めて実感する。
夏の終わりにここにきて、エアコンがない蒸し暑さと着物で体感温度は毎日30℃は越えていただろうというのに、山南さんと斎藤さんだけは涼しそうにしていた。
冬が来てからはみんな「寒い」とは言うものの、永倉さんや左之さんなんかは相変わらず薄着だし。
私は防寒対策として着物を何枚も着こんでいた。
着物を沢山着ているからサラシを巻かなくても良いが。
ここの生活にも、男らしく振る舞うのも、サラシにも慣れたけれど、やっぱり精神的にキツい。
…何が言いたいか。
平成の世でいい加減に生きていたせいか、単に寒いという理由でここの生活が嫌になってきていたのだ。
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