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□確かこれは雨の日の話。◎
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誰かに名前を呼ばれたような気がして、水玉模様の傘ごとクルリと振り返ると、そこには幼馴染が走ってくる姿が目に入った。

チョコレートが大量に入ったスーパー袋を、気にする様子を微塵も見せずに振り回している。


はぁはぁと肩で息をしながら私の前で止まった彼の肩や鞄は濡れていて、本当にちゃんと傘を差していたのか疑わしいところだ。








「学校出んの早すぎ。」

「え、だって残ってる理由ないし。」

「っあー、疲れた!ちょっと待って今息整えてるから。」



空いてる方の手を膝に着いて何度か深呼吸をする。











「…で、何どうしたの。」


奴が復活するのを待ってから、わざわざ今日に限って私を追いかけてきた訳を問いただす。本当、何で今日なんだ。








「今日、何の日か知ってんの?」

「だからバレンタインデーでしょ。」




「だから」って何だよ、と少し不機嫌そうにそう言った。





「別に、チョコ渡すような人いないし。」





そう。今日は年に一度の2月14日。(どの日も1年に1回しか回ってこないんだけど。)



何その意味のない行事、なんていう私みたいな考えはどうやらマイノリティらしい。


放課後を利用して本命やら友チョコやら義理チョコやらを渡すのが毎年の恒例行事となっている。

そして、それを無視して速やかに学校を出るのが私の毎年の恒例行為だ。








「え、凜、チョコ作んないの?!」

「いや作ったよ、自分のために。」




そう返すと、凜って寂しい子だね、と本気で憐れんだ目で見つめ返された。







そんな事より私の質問に答えてよ、と少し強めの口調で言えば、え何?とキョトンとした顔を返された。





「まだ涼介にチョコ渡したがってる人たくさんいると思うけど…何抜け出してきちゃってんの。」



これでもかというぐらいにチョコやら何やらが詰め込まれたパンパンの袋を顎で示す。






「あー…、これ。…でも、好きな奴から貰えないんだったら意味ないし。」

「じゃぁ尚更学校に残っておけばよかったじゃん。そしたら貰えたかもしれないのに。」




…にしてもアンタに好きな子がいたとは知らなかったなぁ。と、独り言のように呟いた。







「…本気で馬鹿?え、馬鹿なの凜って。」


はぁ?とキレ腰で返すと、奴は怒ったようなだけど少し頬を赤くして言った。




「な、なんで俺はこんな奴の事……」





その言葉の続きを言おうか言うまいか考えた素振りを見せた結果、ボケ!と一言発して走り去って行った。









何のために来たんだろう。

学校に戻るなら逆だけどな。











…あ、チョコ1つ落とした。

















確かこれは雨の日の話



--END--

model:山田涼介

彼女とか好きな子とかを相手に、どうしようもなくって困り果ててる山田を想像(妄想)するのは楽しいね!(え、)




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