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□だから俺は嫌だったんだよ。
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【あ、………見つけた。】





君は屋上に居た。
雲一つない綺麗な空の下で、君は俯いて泣いていた。





よっこいしょ、そう言って俺は隣に腰を下ろした。

掛ける言葉も見つからず、ただ広い空を見上げる。













『失恋、、だね。』


君はそう言った。
何も言うことができない俺に気を使ってか、ふふ、と笑った。





『でもまぁ…あんなに綺麗な人が相手だなんて、叶いっこないよね…、』



どれぐらい泣いていたんだろう。
目は赤く充血していた。




【凜……、】



なのに、俺に気を使わせないように君は無理に笑うんだ。




『やめてよねー。涼介がそんな顔することないんだからさ、。』

【いや、その……】



こんな時でさえ、自分の言いたいことが上手く言えないなんて情けない。









"私、好きな人ができたの。"
そう凜に告げられた時には何と言っていいか分からなかった。


俺の好きな人に好きな人ができたんだ。
やっぱり、幼なじみってだけでだいぶ不利なんだな、って思った。




"協力してね、"なんて言われた。

だけど、相手に既に彼女がいることを知っていた俺は、曖昧にしか答えることができなかった。





今思えば、あの時がチャンスだったのかもしれない。

俺の気持ちを伝える時だったのかもしれない。

あいつには彼女がいるんだよ、って早いうちに言うべきだったのかもしれない。



そうしていれば、浅い傷で済んでいたかもしれない。










【……ごめんな、凜。】

『ふふ、どうして涼介が謝るのよ?』



ほらまた。
君はそうやって作り笑いをするんだ。







【…今は何も我慢するなよ、】

『…え、?』



今凜に言えるのはこれが精一杯。






【俺の前でまで強がる必要ないよ、凜。】









抱きしめた凜の肩は、小刻みに震えていた。



















だから俺は嫌だったんだよ。


協力なんてしたくなかった。
こうなることは分かってた。
俺がどれだけ応援しようと結果は変わってなかった。


じゃぁ………


あの時俺が



頷いていなかったら未来は変わっただろうか。

本当の自分の気持ちを伝えていたら君を救えただろうか。






……今隣で、君は笑っていただろうか。








--END--

model:森本龍太郎


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