short
□偶然の出会い。
1ページ/1ページ
ガタン、ゴトン、と揺らされながら通学する毎日。
その揺れに抵抗するでもなく、揺れるがままに身を任せる。
だけど、今日だけは違った。
何か理由があってなのか、ガタンゴトンと揺らされる余裕もないくらいの満員電車。
おじさま臭に囲まれた私は、身動きも取れず、
気をつけの姿勢で目的地に着くのを、まだかまだかと待つ。
…キキィィィーっ、
とその時、急ブレーキが踏まれた。
『ぁっ、!!』
これが慣性の法則か、なんて呑気なコトを思ったのも束の間。
予想以上に平衡感覚が保てなくなり、前に倒れ込んでいってしまう。
…うわ、やばい。
このままいったら確実におっさんに突っ込んじゃう。
覚悟を決めて目をギュッと瞑った時だった。
…クイッっ、…
『うわっ、…っ、!?』
私は、誰かに後ろから襟首を掴まれ、間一髪のところで元の位置に引き戻された。
すごい力の持ち主だ…、
パッと後ろを振り返り相手を確認する。
【…ふは、危なかったね。】
そこには、なんとも爽やかな男子生徒が立っていた。
【急に掴んじゃってごめんね?
急にキミが前のおっさん達に突っ込んでったからさ、】
そう言いながら、さっき自分の掴んだ部分を丁寧に整える。
彼のあまりの爽やかさに、私は首をフルフルと横に振るコトしかできなかった。
~まもなく○○駅です~
車内放送が流れる。
【俺、ここだから。
足、ちょっと開いて立ってた方が倒れにくいよ。】
そう言い残し、少し意地悪そうに笑って電車から降りていった。
発車しても尚、私の頭は機能完全停止状態。
この世の中にまだあんなにも優しい男が存在してたなんて、
人生、捨てたもんじゃないな、
なんて全く訳の分からないコトを思ってみる。
あ…、お礼言えてない。
『まぁいいか、』
また次会える口実になんじゃん、
…なんだ、これは
恋の予感?
ないないそんなのありえない、
なんて自己否定しておきながらも
ホントは気付いてる。
自分のホントのキモチ。
明日もこの電車、乗るのかな、
偶然の出会い
(今日電車でね、)
(おっさんに突っ込みそうになってた
可愛い子助けたんだ。)
(明日も同じ電車に乗ろうかな、)
--END--
model:有岡大貴
!感想をお願いします!