☆新庭

□09
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『わかりました、こちらで何とかします。彼に接触した場合事を荒立てず、あたしのいるコートを相手に教えるようにお願いできます?』

「≪…、わかった。君の言う事を信じよう。≫」

『そうしていただけるとありがたい。多分、今のアイツは選手だろうが一般人だろうが見境無く襲っていくんで。ではそういうことで。』

「≪健闘を祈る。≫」




ピッと小さい機械音を鳴らして電話を切る。

顔を上げると、何処か厳しい顔をしたり、心配そうな顔をしたみんなが目に留まる。

小さく息を吐いてからいつもと違う事を感じさせないように、へらっと笑顔を貼り付ける。




「なんかあったのかい?」

『まあ、ねえ。でも周助たちが心配することじゃないよ。』

「朔、先輩…。」

『んな顔しないの、赤也。へーきへーき、ちょっと此処が騒がしくなるけどねー。』




心配そうな周助を半ば無理やり納得させ、眉を下げた赤也の頭を優しく撫でる。

その間も頭を過ぎるのは、こちらに近づいてきているだろうあいつのこと。

さてはて、大人しくしてくれるか。なんて愚問か。

そこになんとも間の抜けた聞き馴染みのある曲が耳を掠めて、ポケットから普段の携帯を取り出す。




♪みーどりたなびっ…
『はいはい、こちら朔、』




着信音、校歌…!?

驚きを隠せない彼らの前で何の躊躇も無く、電話を繋ぐと同時に携帯を素早く耳から離し距離を保つ。

何を、と思った彼らにも普通に聞こえるいや、むしろ大きいと感じるほどの声量でその携帯から声が飛び出す。




「「「≪姐さあああああん!申し訳ありませんでしたああああ!!≫」」」」

「「「!?ね、姐さん…?」」」

『おいこら、うるせえんだよ。誰が姐さんだ、あ?誰もお前らの姐さんになった覚えはねえよ。草壁だけ出ろ、草壁だけ。』

「≪はい!スイマセンスイマセン!≫」




酷い音声を紡いだ携帯を耳には当てずそのまま口に持っていくと、酷く冷たい声が向こうの群集に浴びせられた。

誰も姐さんなんて呼んでくれと言った覚えはねえし、何故そうなった。

半分頭を抱えながらため息を隠すこと無く零し、草壁を呼ぶとやっといつもの声が耳に届く。




『草壁、現在の状況を説明して。』

「≪はい、現在風紀委員半数が負傷。委員長は…、申し訳ありません。見失いました。≫」

『だろうね、もうひとつ聞いておかなきゃならないね。…どうして負傷してるんだい、ねえ?』

「≪そ、それは…、≫」




受話器の向こうで言いよどむ草壁。

中々煮え切らないその口に、はあっと技とらしくため息を吐いてガシガシと少々乱暴に頭を掻いた。

まったく、上が暴君だと下が苦労するのは、何処かの暗殺部隊と似たようなものだ。











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