☆新庭
□07
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逃げるように寮を後にしてマネージャー室に戻り、赤い籠に余った物を片付けて変わりに青の籠を持って外に出る。
残った高校生は、ここのコーチにより更に厳しく扱かれている。
後にしようと歩いていると練習する高校生を観察するように、見ている中学生がいた。
『…キャンプの練習をどうみる?』
「!…んふ、これはこれは。そうですね、確かにかなり厳しい練習だと思います。最新の機器も揃っていますし、これは更なる高みへ登れそうですよ。」
彼の隣に並んで、同じように高校生の練習に目を向ける。
観察をしていた観月は一度あたしを見た後、前髪を指先で遊びながら目線を前に戻した。
そっと横目で見た観月は、真っ直ぐに高校生を見つめていて、楽しそうに見えた。
『そっかそっか。それはよかった。明日からは君たちもあの練習するからね。今日の自主練は控えめにしといた方がいい。』
「…ご忠告ありがとうございます。」
『あたしも君たちをしっかりサポートするからさ、頼ってよね。』
ジャージの裾を翻して踵を返す。
彼に背を向けるようにして、メインコートを出て後にした。
空っぽの青の籠を若干振り回すように、腕を振りながら寮に戻る道を歩く。
寮に近い、備え付けのテニスコートの横を通ると、そこに集まるようにして自主練を選んだ学校がいた。
(すぐ戻っても問い詰められるのが落ち、かな。)
フェンスの前で立ち止まり、考えを巡らせてから、邪魔にならないように中に入らず備え付けられていたベンチに腰を下ろす。
(不動峰、比嘉、ルドルフ、六角、山吹…は阿久津以外か。あとは…まあ、いっか。)
色とりどりなジャージを瞳に映しつつ、思いに耽っていると、ばちりとオレンジ頭と目が合った。
「朔ちゃあああああん!何何何、俺のこと見に来てくれちゃったとか!?」
『はいはい、落ち着きなさい。ちゃんはやめてほしいんだけど。』
「女の子のことはちゃん付けだったからか、つい付けちゃうんだよね〜。でもでも、何でここにいるの?というか中に入ってくればいいのに〜。」
『…呼びやすいように呼べばいいよ…。練習の邪魔をしに来たわけじゃないからね。こっからで十分。それにもうすぐ夕飯だし、行かなきゃいけないから。』
「え〜、行っちゃうのぉ?」
「千石!マネージャーを困らせてないで早く戻って来い!」
がしゃんとフェンスと揺らすほどに勢い良く駆けてきたキヨに、苦笑いしながら落ち着かせる。
キヨは多少不満そうな顔であたしを見つめていて、フェンス越しということも勝ってどうにも見捨てきれない。
呼ばれても尚も動かないキヨに、フェンスに近づくとフェンスの穴に指を入れてへばり付く様にしていたキヨの額をちょんとつつく。
『ほら、呼ばれてる。あたしも君たちのご飯作ってくるから、行ってきなさい。』
「え、でも専用のシェフがいるって…」
『いるよー、それでも人数が人数でバイキングだし、数品はあたしも作ってるの。美味しいの作ってくるから、練習しなって。』
つんつんとキヨの額を突きながらそういうと、キヨの目が光ってつついていた指を絡みとられる。
いきなりのことに目を丸くすると、キヨはにっこりと笑って「じゃあ、頑張る!」と、ぎゅっと指を握った後に踵を返して南の元に戻っていく。
握られた指をもう片方で包みながらキヨを見れば、あたしを振り返って大きく手を振っていたので小さく手を振り返して忘れず籠を持って厨房に向かった。
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