☆新庭
□06
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「俺様をスルーしてるんじゃねーよ。」
「そうだね。俺たちにも説明してくれる、朔?」
『説明ってさっきの通りだけど?蔵ノ介はあたしの幼馴染で相棒ってとこ。』
青学との気まずい雰囲気に声を挟んで来たのは、景吾と精市。
二人が示しているのは蔵ノ介のことであるのがわかったので、さらっとその質問答える。
立海や氷帝の視線は蔵ノ介に注がれており、本人もその様子に苦笑をこぼしている。
それを見ていた海堂がおずおずといった様子で目を泳がせながら何か言いたそうにしているので促すように見る。
「…手…。」
『ん?』
「手の怪我はだ、んぐ!?」
『そ、それはだめ。』
怪我のことを口に仕掛けた海堂の口を、慌てて手で塞ぐ。
その距離と唐突なことに海堂は内心慌てるが、あたしにはそれがわかっていても放すことは出来なった。
でもそれを聞き逃してくれるはずもなく、彼が近づいてくる足音に身を固め、肩に手がかかる。
ゆっくり振り返ると、そこに居たのは想像通りいい笑顔をした蔵ノ介。
蔵ノ介は海堂の口を覆っている手首を掴むと、自分が見えるように開かせる。
「…俺はさっき怪我がなくて良かったって言うたよな?」
『えー?傷塞がってるし怪我に入らなっ!?』
「…痛いんやろ。これ、刃物を思いっきり握ったんやな。…無茶しとるやないか。」
『…ごめんて、相変わらずその顔にはあたし弱いんだよ。』
手のひらを見て眉を寄せてから、悔しそうな悲しそうな顔をする蔵ノ介。
その表情は、7年前から変わらない。
(またそんな顔をさせてしまう、か。)
その顔を見てしまうと言い逃れることは出来なくて、眉を下げて微笑んでおく。
その顔もまた、蔵ノ介にとってあの頃となんら変わらない朔の表情。
(俺も大概やけど、朔も変わらへん…)
結局どちらも強く言うことは出来なくなって、ごめんと謝るのだ。
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