☆新庭

□05
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ロビーの机に上に籠を置いてから、其処に備え付けてあるソファーに座って大きく伸びをする。

そうして待っていれば比嘉中の彼らが籠から物を取り、階段を下りていく。それに続いて不動峰や六角中、ルドルフなどが下りていく。

それを見ていると目の前に立った山吹のオレンジ頭がにっこりと笑ってしゃがみこんで目線を合わせた。




「俺、千石清澄って言うんだ!朔ちゃんって呼んでもいい?」

『知ってる。でも、ちゃんはちょっと…。呼び捨てでいいよ。』

「ほんと?合宿って言ってたから男ばっかと思ってたんだけど、朔みたいな美人さんと出会えて俺ってラッキー!俺のことはキヨって呼んでね♪」

『あは、褒めてくれてありがと。キヨっていい性格してるね、結構好きだよ、そーゆーの。』

「!//あはは、ほんとー?そんなこと初めて言われたかも。」

『そう?でもキヨ、練習行くんでしょ?お仲間さんが待ってる、行って来なよ。』

「えー、俺的にはまだ朔と話してたいんだけどー。でも君がそういうなら行って来るね。また後で!」




にっこりと笑って手を振りながら、同じ学校の南に向かっていくキヨに手を振り返す。

見えなくなるまで振っていると、向こうから久しぶりに見る彼が率いる中学が歩いてくる。

その手にはラケットはなく、彼らは今日を休息に選んだらしい。あたしが立ち上がると彼もあたしを見つけてふっと笑う。

彼が近づいて声をかけるよりも早く、その少し前を歩いていたヒョウ柄君とあたしの目が合った。




「マネージャーの姉ちゃんや!」

「あ、こら!金ちゃん!」

『ちょっ!』「わっ!」




その瞬間にだーっと走り出した彼は、その勢いのままあたしの腰に手を回して突っ込んできた。

制止の声も聴かずに飛び込んできた彼の勢いのまま、後ろのソファーに倒れるように座った。

赤髪のヒョウ柄の彼はその衝撃に驚きながらも、彼を見たあたしともう一度目が合うとニカッと笑う。

その無邪気の笑みに注意もする気になれずに、彼の頭をなでる。慌て気味に四天宝寺のメンバーが駆け寄ってきた。




「派手に倒れこんだばい。大丈夫と?」

『ん、へーき。』

「きーんーちゃーんーっ!直ぐに離れて正座しぃ。」

「ええー、嫌やー!離しとうない!」

「き ん ち ゃ ん?そないお仕置きが欲しいんか?ん?」

「ひっ、白石…毒手は嫌やっ!」




苦笑気味に声をかけてきた千歳千里に、微笑みながら言葉を返す。

お仕置きと彼が左手の包帯に手を掛けると、腰に引っ付いていた遠山は勢いよく離れて首を振る。

その顔は青ざめていて、周りはそれを見ながら微笑ましそうに笑う。

その様子に思わず口元が上がり、頬が上がって声を抑えられず笑ってしまう。




『あははっ!随分変わったね、蔵ノ介。そこまでにしてあげなよ。あたしは大丈夫だからさ!』

「せっかく人が心配してやっとるんに。…笑いすぎや、朔!」

『ふふっ。もう方言が板に付いちゃったなーとか身長抜かされちゃったなーとか、昔と比べちゃっただけじゃん。』

「当たり前や。何年経ったと思ってんねん、7年や。成長してへんかったら逆に怖いわ!」

「ちょ、ちょい待ち!ふたりは知り合いなんか!」

『うん。幼馴染ってとこかな。蔵ノ介のこーんなちっちゃい時までは知ってるよ。』




座り込んだまま笑ったあたしに、蔵ノ介が眉を寄せて不満そうに愚痴る。

昔と同じように軽い言い合いをすると、それに耐えかねた金髪があたしと蔵ノ介の間に入って両手で制した。

その質問に立っている彼の腰下ほどで手を平行に振って、高さを示しながらへらりと笑って答える。




「朔やってそんなもんやったやろ。」

『あたしの方が2〜3cm大きかったけどね。』

「今は20cm近く俺の方が高いけどな。…ほら。」

『成長期恐るべし…。ん、ありがと…お!?』

「でも…元気そうで良かった。…怪我もあらへんで、生きとって良かった…本当に…」

『…色々あったよ、7年間。でも…、相棒残して死なないよ。…死ねないよ、ばーか。』




座っていた目の前に手を差し出されて、その手に自分の手を重ねると立ち上がるように引っ張られて、更に蔵ノ介の胸にまで引っ張られた。

押し返そうと胸に手を置いたが、聞こえてきた擦れたようなその言葉に、腕に力を入れるのをやめた。

マフィアであるあたし達にとって、この再会はそれ程の価値がある再開で、胸が熱くなるのを感じながらも悪態で返した。

その雰囲気に四天宝寺は入り込めずに口を閉ざし、そこにやってきた立海や氷帝、青学もまた足を止めて口出せなかった。













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