☆新庭

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某県某所の自然が広がる山奥にある、高校日本代表候補の合宿場。

合宿場とは思えない広さの土地に主な練習場にコーチ棟の両側に16、また自主練等のために配置された+αのテニスコート。

最新の器具(マシン)が揃い、最高の設備整えられ不備なく行き届いた施設。

言わば此処は日本テニス界のトップ人材育成の場。所詮、エリート養成所。


そこに彼女は異例に存在していた。




『ねえ。中学生が此処に来るってさ。』

「…ああ。」




施設内のトレーニングルームの一室、マシンに向かい筋トレする男。

彼女はタオルとドリンク片手に器具の1つに寄りかかって、さっき高校生が話していた噂を口にした。

男は汗を掻きながらも、表情変えずに相槌をうつだけ、その反応に彼女は口を尖らせる。




『反応薄…。確かに先輩には勝てないだろうけど、でも他の高校生(下)はどうだろうね。』

「……やけに肩を持ってるな。」




やっと目を合わせたその男に、彼女はへらりと笑ってタオルとドリンクを彼に向って放る。

その自信有り気な笑顔に少し反応しながらも、放られた二つを綺麗に受け取り汗を拭いて水分を取る。

相変わらず的確な塩分、ドリンクの濃さ、温度調節されたドリンクに口には出さないが彼は彼女のマネジメントを会って間もないが信頼していた。

ふたりは選抜ジャージを見に纏っている。彼女は今度にっこりと笑いその言葉に返す。




『まーね。彼等の成長は目を見張るよ?…中学生(ガキ)も甘く見ないほうがいい。』

「…」




ハードルを上げる台詞に一瞬男は手を止めるが、彼女はにっこり笑うだけで直ぐ動かす。

彼女が何かに気付いてくるりとドアの方に振り返り、同じように視線を移すとドアが開かれる。




「居た居た。コーチがお呼びだよ、マネージャー。」

『了ー解。』




同じく選抜ジャージを来た天然パーマに眼鏡をした人が彼女に声をかけながら入ってくる。

彼女はそのままジャージを翻して、振り向くことなくトレーニングルームを出て行く。

その背中がドアが閉まるまで見送り、男は見えなくなってからつい呟く。




「…中学生、か。」

「何だ、キミも気になっているのか?」

「別に。…ただ、アイツがやけに押していた。」

「そーなんだ。じゃあ…少しはやるのかな。」

「…さあな。」




それだけ言うと、彼は先ほどを変わらず…いや、少し口元を上げてトレーニングを再び始める。

その表情の変化に気付いたもうひとりは、ふっと笑ってトレーニングルームを出て行った。

同じく少しだけ口元に笑みを浮かべて…









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