じれんま

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「…ビミョー!つかありえねぇ!全然目標達成できてなくね?」
「津川!調子に乗るな、黙れ。」



スコアボードをじーっと見つめていた津川は、それを理解すると共に半ば立ち上がって吼えるように愚痴を零す。
スコアボードの点数は19:19。見間違いなく、同点の数字が並んでいた。
津川の声を遮るように鋭い視線で睨み上げられながら吐き捨てられた岩村の声に、津川はびくりと肩を震わせてベンチに腰を下ろす。
視線を津川から前を戻すと、岩村はいつも以上に表情を厳し厳かに告げる。



「…もしこの中に今の津川と同じようなことを少しでも思ってる奴がいたら、改めて肝に命じろ。――誠凛は強い。格下などと間違っても思うな!」
「うんうん、油断は禁物だ。岩村はちゃんと分かってるね。」



岩村の前、ベンチの正面に片膝を立てて向き合っているひとりの男が、岩村の言葉に同意するように頷く。
選手の目がその男、正邦の監督に向けられた。



「慢心など10年早い。ましてやお互い同じ高校生。勝負は終わるまで何が起こるか分からん、毛ほども隙を作るな。まだ勝負は―――」



************



「始まったばかりよ!!」



身を乗り出し、カントクは大きくそう言った。
同じようにベンチの前に片膝をつき、床にホワイトボードを置くと早口に口を開く。



「フォーメーションは攻守共このままいくわ!ただパス回しにつられすぎてるからゾーンは少しタイトに。あと火神、ファウル多い!」
「う…。」
『テツにも言われたと思うけど、5つで退場だから。4個目貰ったら交代だからね。』
「なっ!」
『逆に出れるつもりでいたってどういうことなの。何と言おうと引っ込められる、重々承知して置くように。』



ファウルの多さを指摘され言葉に詰まった火神は、苦虫を噛み潰したような表情を返す。
その顔を見ながら相田の隣に立つユナは手元に記録してあるチェックに目を落としながら淡々と言い放つ。
交代、その単語に目を丸くすると驚いたように声を漏らした火神くん、私は多少呆れながらファイルを脇に抱えると腕を組んだ。



「(1年同士良い感じに指摘出来てるわね。)いい?相手に合わせようなんて腰が引けちゃ流れ持ってかれる。攻める気持ちが大事よ!」
「「「おう!!」」」



相田はちらりと言い合う火神とユナを見て口元を上げると、顔を一層引き締めて勢いをつけるように声を張った。
配ったタオルを回収して左腕にかけ、ドリンクを受け取りながら口を動かす。



『恐らく正邦は完全に立て直して向かってきます。当然マークも第1Q以上、気を引き締めて特に注意して下さい。』
「ああ。」
「わかった。」



こくりと頷く水戸部先輩に続いて、日向先輩伊月先輩が返事を返してくれた。
ピーと笛の音に、全員がベンチを立ち上がってコートに入っていった。

(テツ、火神くん…。)











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