じれんま

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『…。(覚悟してたけど、相当堅い。)』



手にしたバインダーに目を落としてから、電光掲示板を見る。
第1クウォーターとは言え、始まって数分は経った。しかし、未だ誠凛の得点は0。
点差は12、現在正邦リードの試合展開だ。

(誠凛(ウチ)はどちらかと言えばスロースターターの攻撃型チームだからね。完全に分が悪い。)

そこで攻撃に勢い付けるダンクを決めるのが、ウチのエース火神くんなんだけど。



「火神持ちすぎだ!よこせ!」
「およ?」
『(壁になったのは上手い、けど…。)』



火神くんからボールを受け取った伊月先輩が、そのまま彼をスクリーンにしてフリーになるとゴールに駆け上がる。
フリーのままレイアップシュートが決まろうとした手元を、伸びてきた手が弾じく。
突然沸いて出てきたかのように、ヘルプに出て来たのは岩村だ。



「甘いな。その程度の攻めでウチのディフェンスは崩せない。」
「くっ…。」
『…っ、(まだ点が取れない。火神くん…!)』



護りが堅い。ディフェンスだけなら東京最強と言われるだけある、と言ったところか。
1番にアクセルを踏み込む火神くんが津川を抜かさない限り、恐らく誠凛は波に乗れない。
それがどんなにスタミナを削ってもだ。じゃなければペースは依然正邦のままだ。



「おい津川、張り切るのはいいけど後半バテんなよ!」
「大丈夫っスよー。思ったほどじゃないんでー!」



先輩からかけられた言葉に、津川は笑顔で返す。汗はかいているものの、未だ余裕だとピースすらしている。
このわっかりやすい挑発に見事腹を立てるのが、いわずもがな火神くんだ。
眉間にぎゅっと皺を寄せると、無理矢理ドリブルで津川に衝突し、審判にファウル宣告されてしまう。



「あのアホわー!どんだけ頭に血が昇りやすいの!?」
「火神ー!落ち着けー!」
『火神くん、ファウルと…。これは…予想した通り展開になりそうですね。』
「…そうね…。」

「火神君、もうファウル2個目です。5つで退場ですよ?」
「…わかってるよ…!(やっぱこいつらの動き、なんかすげーやりずれえ…。)」



正邦のディフェンスは全員マンツーマン。
それも常に勝負所のように密着してプレッシャーをかけてくる。
普通のパスカットじゃ、そのディフェンスから逃れられない。
フリーがないからパスが中々通らない。このままではテツの連携が使えない。テツにパスが回っても、その次のパスコースがないんだ。
それじゃあ、テツのミスディレクションも力半減もいいところだ。



『カントク…。』
「ええ、一度冷静にさせた方がいいわね。」

「誠凛、タイムアウトです!」



密着してのディフェンスは、根気と体力がガッツリ削られる。
普通、そんなディフェンスをやり続ければ最後まで体力が持たない。

しかし、正邦は持つ。それには確かにカラクリがある。











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