じれんま

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「何時にも増して食べますね。」
『…パンばっかり、栄養偏るよ?テツも少食だからってサンドイッチだけはそれも栄養偏るよ…。』
「寧ろそれだけで良く足りんな、オマエ。昨日2試合やってんだぞ、腹減ってしょーがねえ。白椰に至ってはほっとけ、一々弁当とか作ってられるか!んな時間あったら寝る。」
「それに関してはボクも火神君に同感です。あと、ちゃんと筋肉痛ですよ。」
『まあ、睡眠は一理あるけどさ…。』



机の上に軽く山になってある火神君の昼食である、購買の惣菜パンたち。
むしゃむしゃとそれを大口で頬張る火神君に、驚きとある種の尊敬を込めて呟く。
寝るのは大事だ、睡眠は欠かせない。2試合やってるだけあってふたりは授業中もあわせて強は殆ど寝っぱなしだ。
ふたりのノートはとっているが、4回戦・5回戦の2連戦でこの有様では次の準決勝・決勝の2連戦が心配だ。
と、今はそれではなく、睡眠と同じように食事も大事なことである。前から思っていたが、二人とも極端に偏りすぎだ。
せめてバランスよく食べてほしいものだが、二人の態度と言葉を聞くに弁当など作るつもりは微塵もないようだ。



『…お弁当、作ろうか…?』
「は?」「いいんですか?」
『…昔は作ってたしね。まあ、毎日は厳しくても、3日くらいなら何とかなるんじゃないかな。』
「…オマエ、料理できんの?」
「失礼ですよ。ユナの料理は美味しいです。」
『中学時代もうひとりのマネジは料理壊滅的だったからね、任されたら大分上達したと思うよ。』



さらりと中学時代の自分の事を話したユナに、火神も黒子も少し驚いたように目を丸くする。
海常の一件からそうだが、彼女は自分から自分のこと、特に中学での事は話したがらなかったし話そうとしなかった。
伏目がちに言った彼女は、少しは彼女に近づけているのだろうか、なんて考えているふたりには気付かない。



「…ま、そこまでいうなら食費も浮くし有り難いけどよ。」
「ボクも楽しみにしています。」
『…ん、わかった。取り敢えず明日作ってくるね。』
「火神君、黒子君、ユナちゃん!丁度いいわー、ちょっと来てー。」



呼ばれた方を見ると、廊下から大き目のダンボールふたつ持ちその上にファイルを乗せた相田の姿。
呼ばれるがまま近付けば、案の定男子2人はダンボールを女子ふたりはファイルを分け合って廊下を歩いていた。



「…筋肉痛、なんだ…ですけど。鬼か。」
「ちょっとー、乙女に重い荷物持たすの〜?そこはやっぱり頼むよ、おっとこ〜の子!」
『テツ、大丈夫?』
「まあ、このくらいなら。」
「…乙女なんて何処にもいねっ、ぐあ!?」



ダンボールを持ちながら、少し不満そうにリコ先輩を見て不平を零す火神君。
しかし、相田はそんなことも気にせずににこりと笑って手にしたファイル一つを胸に抱える。
リコ先輩がひとりで持っていたくらいだから大丈夫だとは思うが、一応筋肉痛の酷いだろうテツに声を掛けたが思ったとおり大丈夫な重さだったようだ。
が、呟かれた火神君の途切れた声と、鈍い音に目を向けるとリコ先輩の拳がわき腹に決まっていた。でも、自業自得だと思うよ、火神君。



「つーか、これ何!…ですか。」
「部室から持ってきた去年と今年の試合のDVD。スカウティングにね、部室じゃ狭いからさ。なんてったって準決勝・決勝は王者との2連戦だからね、研究し過ぎなんて事はないわ。」



ふんっと意気込むリコ先輩だが、如何にもな理由である。
手元のファイルも、一度はちゃんと見ているのか全ての試合の記録とざっとした印象、ポイントなどが示されている。
これもまた誠凛が努力して強くなっている証なのだと、ぎゅっとファイルを抱きしめた。












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