じれんま

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秀徳コールが広い広い体育館に響き渡る。
そのコートの中で味方からパスを受けた高尾君が、ドリブルで駆け上がり敵をふたりかわして抜く。

(速い…。)

ゴール前まで駆け上がると、そのままシュートするかのごとくジャンプして敵を引き付けるとぎりぎりで4番にパスを出す。
フリーになった4番、大坪は難なくシュートを決めた。
観客席から秀徳の試合を見ていた誠凛は、その凄さに息を飲んでいた。


―――得点板は秀徳:38、錦佳:8。



「第2Q残り4分でもう30点差…。」
「流石って感じね…。」



既にその実力を知っているからか何の反応も返さず、じっと試合を見続ける2年。
火神は鼻を鳴らし、ふと1年トリオが疑問を口にする。



「やってることは俺らとあんま変わらないのに、なんかすげぇ簡単そうに見えるよな。…なんでだろ?」
「ミスがねぇからだよ。」



その口から出た疑問に間を入れず、コートに視線を向けたまま、日向が答えた。
3人の目はコートから日向に移ったが、彼は変わらずコートを見下ろす。



「バスケは、常にハイスピードでボールが行き交うスポーツだからな。けど強いところというのは例外なく、投げる、捕る、走る、みたいな、当たり前の動きからキッチリしているんだ。」
『極端な話をすれば、ただパスを捕るだけでも、その速さとタイミングが合わなければ受け損ねることは珍しくないですから。』
「簡単そうに見えるというのはつまり、基本がガッチリとできているってことだよ。ま、あくまで基本だ。それ以上の理由が当然ある。」



その時秀徳の4番がリバウンドを取ると、秀徳の1人がダンクシュートを決めた。
2人がかりでブロックに飛んだがそれも意味を成さず、相手は勢いに負けて床に尻もちをつく。
ゴールし終わった秀徳の4番、大坪泰介はそんな相手に手を差し出した。


――秀徳(彼ら)が強い理由、



「それは、絶対的な得点源、スコアラーがいることだ。」

「すまない、大丈夫か?」



大坪の相手も物ともしない豪快なダンクシュートを見て、誠凛は驚愕の声や乾いた笑いを零した。
彼のダンクはコートの中ではなく、観客席からでも相当の力強さを誠凛に見せ付けた。



「すげぇダンク!」
「マジあれ、高校生!?」
「また一段と力強くなってるわね…。」
「去年アイツ1人でも手に負えなかったんだけどな…。」
「そう、インサイドの大坪主体で外(アウトサイド)は普通っていうのが去年までの秀徳。…けど、今年は――、」



リコ先輩はそこで口を閉ざした。
全員の目線は無意識に緑色の頭を持つ、カレを追う。
掴んでいる落下防止の手すりを、もっと強く握り締めて私もカレを目に映した。


去年の秀徳と今年の秀徳の一番大きく変わった変化。













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