じれんま

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誠凜高校体育館。
日向は部員を集め、次の試合に向けての決意を告げる。



「もうすぐI・H予選だ!去年はあと一歩及ばなかったが今年は絶対行くぞ!強豪がひしめきあってるが特に、同地区で最大最強の敵は秀徳高校!」



――秀徳高校

去年は全国ベスト8位。しかも今年は海常と同じように『キセキの世代』が1人入っている。
この超強豪校に勝たなければ全国への切符はない。
日向の声は力が入っているようだった。



「黒子…、どんな奴か知ってんだろ?」
「…口で言っても多分信じないですよ。ただ、黄瀬君が最初に言ってたように、他の4人は格が違います。それがさらに進化してたら…、想像もつかないです。」



火神が黒子に聞くと、彼は重々しく口を開く。
その顔は無表情だが、それと同時に真剣さがにじみ出ていた。



「秀徳に挑むためにもまずは初戦!気ぃ引き締めていくぞ!」
「…そう言えばカントクはどこスか?」
「白椰もいなくね?」
「ああ、すぐ近くで1回戦の相手が練習試合してるらしくて、偵察行ってるよ。」



へー、と零す1年ズと共に、黒子は練習に戻る途中体育館の入り口から空を仰いだ。


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「ユナちゃん、練習試合見に行くわよ。」



私が誠凜バスケ部に入って3日、4月末。
突如としてリコ先輩(名前で呼んでと言われた)が教室にやってきた(移動教室の途中で寄ったようで手には教科書を持っていた)
にっこりとした笑顔で言われた一言に、勿論拒否権などなかった。

そして、放課後。
近くで行われるらしいインターハイ初戦の対戦相手の練習試合を見にきていた。



「…これは…。」
『……。』



目の前の練習試合を見て、リコ先輩は思わず声を漏らしていた。
各言う私も口を閉ざした。



「(そんな…去年と全然違うじゃない! 今のウチじゃ秀徳に挑むどころか、――1回戦で負ける…!)」
『リコせ…いや、カントク。私、先に学校に戻ります。』
「え…?」
『トーナメント表コピーして渡してきます。私(マネージャー)の仕事なので。』
「…そうね、わかった。私はもう少しだけ見ていくわ。」



ぺこりと軽く頭を下げてから手に持っているバインダーを抱えて、体育館を出る。
確かに、今のままでは厳しい。だが、それは所詮“今のままでは”の話。

(…例えば、あの子のほうが高かった。)

こんなところで躓くような誠凜ではない。
戻る足取りは少しだって重くなかった。









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