じれんま

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「…っ、よっしゃああ!!」



スコアが変わる。示されたのは0秒と、100対98の得点。

…勝ったのは誠凜。

それを見て火神は吼えるように声を上げた。
嬉しさにベンチの選手がコートに走りこみ、相田が選手に向かって親指を立てる。



「嬉しい通り越して信じらんねえ…!」



それに返すように、日向を先頭に伊月と水戸部も親指を立てた。
膝に手をつけて肩で息する黒子も、彼らを見てそっと口元を上げる。
喜ぶ誠凜とは対照的に、海常はその様子を見つめ笠松は肩を落としつつため息をつく。



「負け、たんスか…?」



海常の先輩たちの後姿を見ながら、黄瀬は呆然として呟く。

(…生まれて、初めて…。)

自分で言った言葉で理解するよりも先に、瞳から何かが滑り落ちる。



「…あれ…、あれ…?」
「黄瀬…、泣いてね?」
「いや悔しいのはわかるけどよ…、たかが練習試合だろ。」



慌てて滑り落ちる雫を拭うが、次から次へと零れ落ちてくるそれは止まらない。
喜ぶ黒子も泣く黄瀬も両方を見て、私の瞳からも生暖かいそれは頬を伝っていく。
感情はぐちゃぐちゃで、嬉しいのに悲しくて悔しくて高ぶっている。入り混じっているけど、涙は止まってくれない。
たかが練習試合だ。だけど、されど練習試合。
帝光にいた黄瀬にとって、負けという事実は知らなかった事、その感覚。
俯いた黄瀬の腰目掛けて、蹴りが入ってくる。



「こっのボケェ!」
「のあああっ!」
「メソメソしてんじゃねェよ。つか今まで負けたこんがねーって方がなめてんだよ。シバくぞ!そのスッカスカの辞書にリベンジって言葉ちゃんと追加しとけ!!」



振り返った黄瀬の瞳にはまだ涙が光っていたが、変わらない笠松の言葉に小さく頷いた。

(海常高校、か。いい所に、入ったね…。)

整列の声に、両チームが審判の前に並ぶ。



「100対98で誠凜高校の勝ち。」
「「「ありがとうございましたー!」」」















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