じれんま

□03
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正直、予想していなかったわけではない。
…寧ろ、こうなると判っていた。

(まさか隣の席とは思っていなかったけれど…)

左隣の窓側に居るのは、水色の髪と目立つ頭を持ちながら非常に影の薄い元チームメイト。
普段大きく表情の変わらない彼だが、この状況では流石に驚いていたようだった。
斜め前…黒子くんの前には、すれ違った暗い赤髪の高身長の彼が座っていた。
一番後ろの席に前が大きい、さらに影の薄さが合わさって回ってくるプリントは全て一枚足りない。
勿論、私の分ではなく黒子くんの分だ。
私の分を渡して取りに行くのはある意味慣れた役回りだ。

――慣れた役回りだが、これは無いと思う。



「提出期限が明日迄なんだ、先生ではどうも見つけられなくてな。お前は“わかる”んだろう?じゃあ白椰、すまないが頼んだぞ。」
『………はい。』



ここでも同じだ。見付けられないからって私に寄越すのは、やめてほしかった。
放課後、今頃部活をやっている時間だ。
だからこそ、やめてほしかったのに。
体育館の前で足が止まる。

(出来れば来たくなかった、なんて哀しくなってくる。)

開けっ放しの入り口からは聞き慣れたバッシュの響く音、ボールを打つ鈍い音が耳に入ってきた。
また泣きそうになりながら、フードを深く被り直しさっさと済ませてしまおうと久し振りに放課後の体育館へ足を踏み込んだ。
ばっと目に入ったのはバスケ、赤髪…火神くんがボールを持ったその瞬間。

(…この感じを私は知ってる。)

一気にトップスピードにあげガードを抜く、追い掛けてくるのを急停止切り替えしダンクを打ち込んだ。
ギアの切り替えの速さ、ボディーバランス、天賦の才能のバネからくる異常な跳躍力。

――沸き上がる期待、それは以前も感じた。
――忍び寄る恐怖、それは後を知ったから。

瞳が惹きつけられる、でも同時にぐっと胸がつまって苦しい。
掌で顔を覆うようにして、俯いた。

(…嗚呼、泣きたくなる。)

瞳を閉じる、それからすっと無表情を貼り付けてふと周りが騒がしいことに気付く。
気がつけば周りは女子ばっかり、ごくりと唾を飲み込んだ。
聞こえてきた高校の名は、知っている名前。バスケの名門校にしてキセキの世代の一人が入った学校。
嫌な予感が巡って、早くこの場を離れようと黒子くんに近づく。



――彼のバスケは、あまりにも……。
















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