じれんま

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新設校と言うだけあって、何処もかしこも綺麗だ。
何処の部活も新入生を欲しがって昇降口へと続く道はごった返している。
売り子の声をヘッドホンで遮りながら、人と人の間をすり抜けて足を進める。

(…190ジャスト…)

暗めの赤い髪をした少年とすれ違いつつ横目で見る。
周りより頭ひとつ大きい身長、どちらかといえばがっちりした体付き。

(…彼なら…、)

そこまで考えて、小さく息を吐き目線を落とした。
嫌な癖になったものだ。いや前までならいい癖なんだろうけど。
ふと横を見ると、各部活のブースを示した地図の前。
相変わらずひとつの単語しか目に入らないのはある意味病気か、嫌になる。
だというのに足は勝手にそこに進んでいて、目の先にはバスケ部のブース。
表情を固めてそっとその集団の中へと口を挟んだのは、ただの気紛れだ。



『すいません…失礼なのは重々承知なのですが申請用紙見せて頂いてもいいですか?』
「え、ああ。うん、いいわよ。」



マネージャーさんか女の先輩から借りた紙を確認すると、見付かったひとりの名前。
備考の欄に書かれた帝光中の文字に懐かしく、それでいて嫌悪感さえ抱き眉を下げた。

――黒子テツヤ。帝光中バスケ部出身。



『…バスケ、続けるんだね…』
「え?なんか言ったかしら。」
『いえ、ありがとうございました。』



紙を彼女に返し、小さくお辞儀をしてブースを離れる。
かつて同じチームメイトだった彼は、一度私達から…バスケから離れた。
でも変わらずバスケを続ける。私とは逆の対照的存在。
ヘッドホンをし直して人の群れのなかに再度紛れ込んだ。


「凄い頭だったねー。」
「確かに、凄い色だったな。」
「あのこ、何が知りたかったのかしら。」
「…まあ、ちょっと気になるな。」



日向は眉を寄せて、彼女が去っていった人混みを見た。
――バスケ続けるんだね…
リコには聞こえなかったらしいが、彼女はそう呟いた。
彼女が見ていた紙を見直す、一番上にあったのは帝光中と書かれた期待の新人。
だが、日向にはそれを見ただけでは言葉の真意が分かるはずが無かった。










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