☆新庭
□08
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総入れ替えで此処にまだ慣れていない中学生が多いからか、昨日までより一段とざわざわと騒がしい。
それもまた、“あり”だ。
変わらず料理を手にその騒音の中を真っ直ぐに進んでいく。
「朔、おはよう。昨日はあの後眠れたん?」
『おはよう、蔵ノ介。そっちこそ。』
ばったり目が会った蔵ノ介と挨拶を交わし、なんとなく隣を歩いて目的の席へ進む。
彼の手には既に料理が揃えられており、同じく席に戻るところだろう。
『あら、バランスの取れた料理ですねー。』
「馬鹿にしとるやろ。」
『えー、昔の偏食のくーちゃんからは信じられないなんて思ってないない。』
「お前な、それは思って…。」
「コシマエーー!それワイが先に取ろう思っとったやつやでーー!」
蔵ノ介の声を遮ったのは、元気いっぱいのあの赤い髪の一年ルーキーの声。
聞こえたほうに目を向けて蔵ノ介を見ると、大きくため息をついて開いている右手で顔を覆った。
その口から零れたのは、またかと言う言葉。
『手綱はしっかり握っててよ、白石部長さん。』
「全く、油断も隙もあらへんわ。話くらいさせて欲しいんやけど。」
『まあ話す時間なんてまだまだ腐るほどあるって。それよりあまり騒ぎすぎない方がいい。…コーチに睨まれるよ。』
まあ、もう遅いだろうけど。
蔵ノ介は少し眉を寄せたが、ほな、止めてくるわ。と騒ぎの中心へと足を進めていった。
その後姿を見送ってから何事もなかったかのようにあたしも昨日と同じ3人の下へ向かう。
変わらず彼らはそこにいて、席はひとつ空いている。そこに料理を置いて席に着く。
「おはよう、朔ちゃん。」
『はようございます、かーた先輩。カズヤ先輩と十先輩も。』
「…おはよう。」「ああ。」
「朔の言ったこと当たったな。」
「あ?てことは、今日は俺か。」
『ああ、もう見に行ったんですかー。そうですねー、もう自分で吃驚するくらいどんぴしゃー。』
カズヤ先輩の一言は朝張り出された入れ替え戦の話だ。
貼ったのは自分だからコーチの次にそれを見たからすでに知っている。
ただひとり選ばれた中学生。そしてその対戦相手は十先輩。
思ったとおりの対戦表。
コーチも人が悪いと言うか。わかりやすいというか。中学生達も表を見たのか、選ばれた彼の名が遠くで呼ばれているようだった。
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