じれんま

□06
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「何か変わったんスよね?」



その問いかけには答えず、火神はボールを持って走り出す。

(ただのドライブ…?またフェイダウェイとか?)

火神の後を追う黄瀬。しかし、火神が持っていたボールは後ろを確認することなく彼の手によって黄瀬の横を通って後方へと戻る。
それまでは無かったパターンだが勿論、黄瀬はボールを追って振り返り、その際に一瞬足が止まった。
追いかけたボールの先に居たのは、黒子。
火神が後ろに居た黒子に向かって放ったパスは、黒子によって折り返され黄瀬の周りを一周するようにまた前の火神に返された。

(黒子っちと連携でっ…!)

完全に裏を取られたような形で黄瀬は手が出せず、帰ってきたボールを火神はきっちり手に収めると、飛躍してダンクを決めた。



「よしっ!」
「ナイシュー!」



ベンチから声が上がり、コートの中も一層士気が上がる。
続けざまに火神にボールが渡ると、ドライブで走り、黄瀬の横をボールが一度戻っていく。

(またっスか、同じ手は…、…なっ!)

黒子から火神に戻ってくる瞬間のカットを待ったが、黒子のパスは火神には戻らず、日向の元へ。
落ち着いて日向が放った3Pは吸い込まれるようにゴールに入った。

――5点差。



「相当打ち込んでるな、あの4番。」
「それより火神だ!抜く時に黒子との中継パスを組み込んできやがった。」
「パス貰うだけだった火神がパスもするようになっただけだろ。そこまで変わるか?」
「エラい違いだよ、馬鹿!」



今までの黒子のパスと火神の1対1はあくまで、別々の攻撃(オフェンス)パターン。
言うなれば、ただの2択でしかなかった。
しかし、火神がパスをすることで繋がった場合、お互いの選択肢が増え、前より1段上の攻撃力になった。

(しかもその要である黒子くんは黄瀬くんが動きをコピーできない。…云わば天敵。)

まだパスにもミスがあるし、荒さも残っていて完璧ではない。
勝算はギリギリ、と言ったところか。



「黒子っち…!」
「…黄瀬君は強いです。ボクはおろか、火神君でも歯が立たない。…けど、力を合わせれば。ふたりでなら、戦える…!」



黒子と火神、そして黄瀬。向かい合うようにして立つ3人の間には緊迫した空気が漂う。













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