魔王の使い魔 (原作名 魔法少女リリカルなのはStS)

□プロローグ
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ガジェットの自爆による被害はなく無事、管理局に帰ることになったが、青いローブを身に纏い、アヴェンジャーと名乗る少年が、なのはの使い魔になっていた。





それは先程のガジェットの自爆の後のことだった。

なのはがガジェットの爆発に対応できず、手で顔を覆うことが精一杯だった。
しかし、爆発が起きて光が洩れてもなのはに爆発は届かなかった。
目の前に青いローブを身に纏った小柄な人が青い魔法陣を出して爆発を防いでいた。
魔法陣を発動している姿は絵になるほどのものだった。
なのははその姿に見惚れ、時を忘れていた。
一秒、五秒、十秒、一分、一体どれほどの時間が来たのかわからないほど見ていたのだろう。

気がつけば、青いローブを纏った人物はこちらを向いていた。


 「サーヴァント、アヴェンジャー。召喚に応じ参上した。問おう。貴方が私のマスターか?」


その声が聞こえると同時に青いローブの中にある顔が見えた。
蒼い瞳に、茶色の髪、幼い顔立ちの少年だが、こちらに向ける表情は凛々しく、まるで幾多もの戦場を駆け巡った戦士のような表情だ。
なのははその顔にも見惚れてしまい、アヴェンジャーに肩を掴まれるまで気が緩んでいた。
肩を掴まれたなのはは、一瞬にして意識が戻り、アヴェンジャーに肩を掴まれていると気づくと、驚いて無意識から出たのか、『Divine Buster』なのはが持つレイジングハートから聞こえた魔法発動キーは、なのはの主砲である砲撃魔法ディバインバスターを撃ってしまった。

しかし、アヴェンジャーは何かを小言で呟くとディバインバスターがある範囲を通ると露散していった。
これには、なのはだけではなく、周りにいたヴィータや局員までも驚いていた。
安堵の吐息をもらしたアヴェンジャーは、なのはにもう一度問いかける。


 「もう一度聞こう。貴女が私のマスターか?」

 「わ、わたしが貴方のマスター?」


アヴェンジャーにマスター呼ばわりされるなのはは戸惑いながらも聞き返した。
使い魔を持たないなのはにとっては聞きなれない単語だからである。
仮に使い魔が居ても他人にマスターと呼ばれることはまずあり得ない。


「右手を差し出してください。右手の甲に令呪があれば、貴女は私のマスターです」


右手の甲に赤い文様があることに気付いたなのはに、確認を取れたアヴェンジャーは、

「契約はここに完了した。これから貴女の盾となり、知恵となることをここに誓う」

と言うと、再び安堵の吐息をもらし、「疲れたぁー」とアヴェンジャーは雪の積もっている岩に腰かけた。

アヴェンジャーの雰囲気の急な高低差になのはは驚きもしたが気になることがいくつかあり、アヴェンジャーに尋ねてみた。


「え、えっと・・・どうして、私がマスターなのかな?」

「さぁ? ここに聖杯はないみたいだし、ただの誤作動による召喚じゃない?」


聖杯?誤作動による召喚?分からない言葉が出てくるが、アヴェンジャーは一向に気にしない様子である。


「ところでマスター、マスターの名前聞いてなかった。教えてくれる?」

「あ・・・そうだね、わたし高町なのは。管理局嘱託魔導師をしているの」

「なのは・・・なのは。マスターの名前はなのは。よし、覚えた。なのは、なのは」


自己紹介終えたなのはは、噛まずに言えたことがうれしかったのか、小さくガッツポーズを決めていた。
ブレイカーはなのはの名前を覚えようと必死に小声で繰り返し復唱している。
名前を聞いていないで思い出したなのはは、アヴェンジャーに名前を聞いた。


「あなたは、なんていう名前なの?」

「あ、オレ? オレはアヴェンジャーって呼んでくれた方がうれしいな」

「名前はアヴェンジャーさんでいいの?」

「うん、そっちで呼んでくれ。ちなみに本来はブレイカーってクラスだけど、そのクラス好きじゃないからさ」


よくわからないが何とか納得したなのはは、今が任務帰りであることを思い出し、ヴィータ達のいる方向へ振り向くと、未だ唖然とした表情でいた。
先程のディバインバスターが効かなかったことに未だ驚いているようだ。
ヴィータは我に返り、なのはの元に駆け寄った。
アヴェンジャーに警戒するもなのはに手を出していないことや爆発からなのはを守ったことから、必要以上の警戒をしてはないようだ。


「なのは! 大丈夫か!?」

「うん、大丈夫だよ。ヴィータちゃん。むしろ、体が軽くなった感じ」


爆発による怪我がないか心配したヴィータだが、それは杞憂に終わり、なのはの体は本当に軽くなっていた。
今まで蓄積していた疲労はなくなり、今は最高の|状態≪コンディション≫である。

しかし、蓄積した疲労はアヴェンジャーの方にうつされていた。
アヴェンジャーの魔術回路はダメージにより暴走し、倒れてしまった。

マスターであるなのはの疲労が蓄積され、魔力で肉体を強化しないと動けないようになってしまったが魔術回路が使えないため、何もできなかった。

なのはたちがアヴェンジャーの異変に気づいた時にはアヴェンジャーのローブはほとんど血で染まっていた。

アヴェンジャーの体を退かすと、体の下にはどす黒い血の池ができていた。アヴェンジャーはまだ息があるがいつまで保つかわからない。



ヴィータは救護班は急いで呼び、ミッドチルダの病院に運び込んだ。

その終始を見ていたなのははアヴェンジャーの血を見て怖気ついた。将来有望とはいえ、未だ死などの危険に身を置いていない彼女にはかなりきつかったかもしれない。

そう考えた上層部は、なのはに|精神治療≪カウンセリング≫を義務付けた。

アヴェンジャーは一命を取り留めたものの、体か脳に障害があるかもしれないと医者は言っていた。

原因は従者の主の痛みをフィールドバックしたことと、魔力の暴走である。

それを聞いたなのはは後悔した。命の恩人に恩を仇で返してしまったことを。

また、ヴィータもなのはと同じことを考えてしまい、己自身を恨んでしまった。
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