オリ主のオリ主によるオリ主のための聖杯戦争

□八野坂吹雪の聖杯戦争
1ページ/4ページ

屑鉄となり果てた建物


煉獄と化した街


燃え尽き、灰と化した人々の死体






まさに、地獄というべき光景だった。人の喚く声は、火災の炎にかき消される。

皮膚であった場所はもう燃えつき、人々は水を求めてさまよい続けた。しかし水などなく力尽き、幾多もの人々は倒れた。








聖杯戦争

手にした者の望みをかなえるという万能の願望器

聖杯をめぐり、七人の魔術師が七人のサーヴァントを用いて繰り広げる争奪戦

聖杯は自らを持つにふさわしい人間を選び、競わせ、殺し合い、ただ一人の持ち主を選定する

サーヴァントとは、伝説の英雄が聖杯によって受肉化された者

彼らは基本的に霊体としてマスターのそばに居る

必要とあらば、実体化させ戦わせることができる

これだけの奇跡を起こす聖杯ならば、持ち主に無限の力を与えよう












夢を見た。

鮮明に映る夢だから、妙な現実感にとらわれる。まるでこの世界が、異世界であるかのように…。

邪念を振り払い、体を起こす。やはり、右手に痣が残ったままだ。赤い痣。懐かしいような、悲しいような、そんな感情が不思議と湧いてしまう。この赤い痣が運命を導くような気がして、儘ならなかった。

一人暮らしを始めて、まだ一年もない。マンションの一室を購入し、穏やかに過ごしている。両親はそろって海外で仕事をしているため、日本にはいない。

そういや、自己紹介がまだだった。
俺は、八野坂 吹雪。高校一年生。
成績優秀ではないが、落ちこぼれでもないぐらいの成績。趣味は色々。特技は特になし。これといった自慢話もない。

昔、ボクシングやっていて、今も練習だけは欠かさずにやっている。だけど、ボクシング部などに入る気などない。

あくまで、自己防衛用に練習しているだけだ。日頃から鍛えているおかげで、引き締まった体型だ。




まぁ、こんな長たらしい説明をするのも疲れてきたし、ぶっちゃけて言うと、ここまで頑張って説明してきたのはある理由があったからだ。

俺の家系は、代々魔術師という、ファンタジーな職業に就いている。

社会では存在せず魔術は隠蔽するものだと、俺は理解している。俺の親父も例外ではなく、魔術師である。

俺も魔術師ではあるが、魔術を使うことはほとんどない。

魔術といえば、何でもできると思うが、実際そんなことは儚い希望だった。

魔術の基本は等価交換。何かするには、何かを失う。

魔術で火をつけるのと、ライターで火をつけるなら、断然ライターの方が早い。魔術で火をつけるだけで労働力をかなり使い、金銭的にも使うときは使う。

ライター一本で何回も火をつけられるなら、確実にライターを選ぶだろう。

それほどまでに、俺にとって魔術はあまり興味はなかった。しかし、それは聖杯戦争に参加するまでの間だけだった。









その日も吹雪は、いつもと変わらない日常を過ごしていた。
夜、ずいぶん前(約70年)から代々引き継がれ使われてきた倉庫兼訓練室で吹雪は、練習をしていた。いつも通り筋トレをこなし、シャドーボクシングを始めている時だった。




床は赤く光り、魔力の奔流が肌で感じ取られる。

激しく逆巻いている風と稲光に圧倒され、吹雪は尻もちをついた。

突然の魔術の発動。

高密度の魔力の塊が二つ。

右手に赤いあざと魔術回路にほとばしる激しい痛み。

風と光がライトアップのように、姿を照らす。

そこには、二人の人物がいた。


一人は、少年。
しかし、少年から出る雰囲気はまさに幾多もの戦場を駆け抜けてきた猛者そのものだった。
赤い外套を身に纏い、そこからでも戦闘準備は既に万端とわかる。


そして、もう一人は、青年だった。
一見、日本人のようにも見えたが、髪の色は白く、目の色は蒼色。
身長はそこまで高くはないが、低いわけでもない。
容姿を除いたら、一般人にも慣れるのかもしれないが、背中に見える大剣がそんな雰囲気を壊している。

その二人は、同時に吹雪に対して、

『サーヴァント、アルケミスト。召喚に応じ参上した。お前が俺のマスターか?』
『サーヴァント、キャスター。召喚に応じ参上した。問う、貴様が我がマスターか?』


聖杯戦争。

昔、祖父に一度だけ話を聞いたことがある。

あの時は、昔話か何かの一種として聞いていたから、あまり覚えていないが、何か記憶に引っかかるものがある。

「あぁ。おそらくだが、お前たちのマスターは俺だ」

アルケミストとキャスターは何か考えこんだ表情になった。吹雪も何か考えていた。

「では、貴様。右手を見せろ。礼呪が2つあるのかどうか」

吹雪は、右手をキャスターの前に差し出し、礼呪を数えた。1,2,3,4・・・6。
サーヴァント一人につき、3つだから二人分合わせて6つ。

礼呪が二つあることを確認すると、キャスターは再び考え込んだ。

アルケミストは、両手を胸の前に会わせ、まるで神に祈るような形をしてから、両手を地面についた。

地面についた両手の前に壊れた時計が稲光と共に復元した。
これには、キャスターも驚き、吹雪は唖然とした表情になっていた。

「ざっと、こんなもんか・・・」

アルケミストは何もない澄ました表情で呟いた。
おそらく、あれでまだ本気ではないのだろうと吹雪は直感で感じた。

「・・・アルケミスト、マスター。ひとまず、お互いに自己紹介をしようではないか」

キャスターが提案を述べた。これには、アルケミストも吹雪も賛成だったので異論は来なかった。

「まずは、我か。キャスターのクラスにおいて、現界されたサーヴァントだ。基本的な戦闘スタイルは使徒空拳、もしくは大剣を用いた戦法のみだ。真名は解らない。以上だ」

「おい。ちょっと待て、キャスター。真名がわからないとはどういうことだ?」

「そのままの意味だ。アルケミスト。この召喚自体異例だ。我らの記憶が摩耗していてもおかしくはない。アルケミストよ、貴様は生前の記憶をすべて覚えているか?」

「そんなことは・・・・・・くそっ」

アルケミストは歯切れを悪くし、苛立っていた。

彼も記憶の一部が消えているのだろう。

今回の聖杯戦争は異常である。
本来、聖杯戦争で二体のサーヴァントを召喚、しかも同時に行うなど、前代未聞である。

「俺は、アルケミスト。名前の意味の通り、錬金術師だ。そして、真名、エドワード・エルリック。鋼の錬金術師だ」

鋼の錬金術師?錬金術師は知っているが、そのような名前聞いたことがない、と吹雪は思っていた。

キャスターも聖杯から現代の知識を貰っているようだが、エドワードの二つ名を聞いたことはないみたいだ。

「最後は、俺か。俺は八野坂吹雪。現代の魔術師で、お前らのマスターだ。魔術師としては三流かと同等ぐらいか、それ以下か。まぁ、俺自身あんまり気にしていない。これからは、聖杯戦争にマスターとして参加させてもらう。これから、よろしく。キャスター、アルケミスト」

キャスターとアルケミストは頷き、これからの起こる聖杯戦争での戦略やその為の現地調査など、いろいろ話し合った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ