BAR スコッチウォッチ(小説)

□カシス
1ページ/1ページ


ここは大阪にあるBAR スコッチウォッチ。

バーテンダーはこの道、25年の寅次郎45才。
アゴヒゲを生やし、への字口が特徴なダンディな男だ。


今日も店をオープンして、競馬新聞を読んでいると、常連の男性が若い女性二名を連れてきた。


毎回なのだが、この男性は必ず、女性にカシスオレンジを飲ますのだ。

決まって言う言葉が「居酒屋とちゃうやろ」


「そりゃそうである!一緒にされちゃかなわん」と言いたい気持ちを抑えながら、シャルル・バノーの フィリップ・ド・ブルゴーニュ・カシスを冷蔵庫から出す。

常温のオレンジをスクイザーを使い、優しく手で絞る。

グラスは敢えて、バカラのオールドファッションドグラス。 かなり大きめなロックグラスと思っていてくれていい。

グラスに丸い氷を入れカシスリキュールを注ぐ。

絞ったオレンジを注ぎしっかりステアした後にオレンジピールを振り掛け氷の上に香りつける。

決まって初めて来た女性客は、普段飲んでるカクテルと違って驚くのである。


寅次郎「ではカシスについて少しだけ、フランスのシェール県ブルージュ市で作られてます」
毎回、この件(クダリ)で海外で県?市? とか思う

「本来黒スグリって言うんだが、各メーカーによって製法が違うから、味は全く違うねん」
いろいろと知っているんだが、途中でめんどくさくなって基本的にウンチクは言わない寅次郎である。

間も持たないので、寅次郎がサービスで出したのは「クレーム・ブリュレ・ドカシス」

作り方は簡単!

卵黄、牛乳、砂糖、生クリーム、バニラを熱してカシスリキュールを加え、ココットに流し込み、湯を張った天板に乗せ130℃のオーブンで30分間、湯煎焼きする。焼き上がったら冷蔵庫で冷やし、オーダーが入ったら、グラニュー糖を振り掛け、カスバーナーでカラメル状に焦がす。

入口が開く「ギィー」

「あぁ!いらっしゃい!」
今日も忙しくなりそうだ。

寅次郎は競馬新聞が見たくてたまらない。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ