がんばる小悪魔ちゃん(終)

□小悪魔ちゃん 人に会う
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彼女が彼に出会ったのは、偶然である。
中央大陸にある深い森。その奥底にある洞窟に、ひとりの少女が何百年も昔から住んでいた。
その名は、レム。
17歳の少女である。
魔王サタンがいる魔界の住人ではあるが、サタンを初め、彼の従者達にすら姿を見せず、ましてやその名さえ知られてはいない。
なぜ彼女が魔王らに認知されていないかと言えば、答えは簡単だ。
彼女がそうしているからだ。万が一にも、誰かに姿を見られるようなことがあるならば、どんな相手だろうと彼女は魔力を使って、相手を眠らせる。
そして、自分に会ったことなど忘れてしまうほど、思い出すだけでも恐怖で震えさせる悪夢を彼女は相手に見せるのだ。
それ故に彼女は誰にも知られてはいない。否、彼女自身も知られたくはなかった。人間と悪魔の混合主であると。
知られたら、敵対している種族の血が混じっているからと、殺されてしまうのではないかと危惧し、恐れていた。
彼女は捨て子である。
生まれてすぐに捨てられた。母親ではなく、村の人間にだ。
赤子を放置したらどうなるのか。考えるまでもない。そのままでは、飢え死にだ。けれど、彼女は紛いなりにも悪魔であり、特殊体質だった。
食料や水は彼女にはあっても無くても困らない。彼女の周りに生き物がいればいい。その生き物を眠らせ、夢を見させ、夢を食べるのだ。
と言っても、咀嚼の必要な食事ではなく、水を飲むようなものである。
夢を見てくれる生物さえいれば、彼女は餓死することはなかった。
人が息をするように、彼女も生き物を眠らせ、夢を食べていた。
住みかの洞窟は、誰も近寄らないという、彼女にとっては最高の場所である。
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