本棚V

□カテゴリー
2ページ/10ページ

後から知ったことだけど、大野さんの新しいスマホには実家とマネージャーの連絡先しか登録がなかったらしい。
相葉さんに自分のアドレスを教えた後、相葉さんのも聞いて登録していた。
電話会社に行けば登録バックアップしてあるんだろうなーと思ったけど教える気もない。
「ニノのも教えて?」
トテトテと側に寄って小首を傾げ可愛く笑っても、笑い返す気にはなれなくて。
「すみません。覚えてないんで。」
冷たくいい放ちゲームに視線を落とした。
横で固まったのは分かったけど、俺のショックも酷いものだったんだよ、と罪悪感は膨らまなかった。
「智くん、ほら」
「スマホ貸せよ」
翔くんも松潤も結局大野さんには甘いのだ。
大野さんは気を取り直したように二人の方へ駆けていった。

「あんまり意地悪したら可哀想だよ」
そっと相葉さんが囁いた。
もう一人甘い人がいた。




それ以来、大野さんからアドレスを聞かれることもなく俺からも聞くことはなく。
家族といるより長い年月いたというのに、それだけの存在だったのかと、心に空洞ができたようだった。
どこか裏切られたような気分になっていた。



「そういえばさぁ。壊れた携帯って水没?破損くらいだったらカードを入れ替えるだけですんだんじゃない?」
忘れた頃にまた思い出させられた。
翔くんの質問にびくりと一瞬体を震わせた大野さんに気付いた。
「は、破損だったけど、もう捨てちゃったから」
明らかに動揺した大野さんは視線を彷徨かせた。
俺が見ていることにも気づけない。
息を潜めて様子を伺っていると、苦しそうに胸元を握りしめた。
「大野さん?」
声をかけて、振り向こうとしたのにその体はスローモーションのように床に倒れこんだ。
「!」
駆け寄って抱き起こすと青ざめた顔は苦し気に眉を寄せていた。
「マネージャーに伝えてくる!」
「収録は中止だ!」
「智くん!」
それぞれが動き出しても、俺は抱き締めた華奢な肩から手を離すことなどできなかった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ