本棚V

□僕らの詩を
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「っくそっ」
灰色のビルの壁に倒れそうになる体をすがらせて舌打ちをする。
一緒に戦い逃げてきた仲間とは散り散りに別れてしまった。
あとで合流できればいいが。
「確か、このあたりだよな」
思い体を引きずりながらキョロキョロと見渡すが、それを指し示すような道標は何一つない。
そりゃそうだ。
もぐりの医者だと聞いている。
仲間の口コミを便りにここまで来たけど、見つけられなければオワリだ。
そのままシャットダウンされて路地のゴミと成り果てる。
体の中で警告音が鳴り響いている。俺もここまでか、と思った矢先、グッと腕を引っ張られた。
むせかえるような花の香り。自分の腕を引っ張っている相手を見た。ヒトかアンドロイドか。
似たような背丈の男は、早くしなきゃと眉を寄せた。
「あんた…もぐりの医者か…」
攻撃的な意思が皆無だと見てとれると一気に力が抜けた。
「わっ」
男が小さく悲鳴をあげた。
そこで俺の意識は途絶えた。
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