本棚V

□Sweet whiteday
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チッと舌打ちをして急いで玄関に向かう。

これで前回は痛い目見たのだ。
ゲームに夢中になってるフリがフリじゃなくなってしまって。
大野さんのマンションまで追いかけて、結局は甘く終われたからいいけど、大野さんの涙は心臓に悪いから。

思い切りドアを開けたら、ゴンっと鈍い音と同時に下から、いでっと声がした。


「そこで何してるんです?」
しゃがみこんでおでこを押さえる大野さんを呆れながら見つめた。
「早かったね。」
ちょっと嬉しそうなのが気に入らない。
「消えるのやめてもらえません?」
手首を掴んで立ち上がらせ、玄関のなかに引きずり込む。
「ニノこそ、ゲームばっかりはやめてよ。」
「うん。それは、ごめんなさい。」
手を繋いだままリビングに移動する。
「にの?」
黙ってしまった俺を不思議そうに見つめる瞳は綺麗で。
この人は心まで綺麗なんだよなって思う。
「どうしたの?」
心配そうな瞳に、やっぱり駄目だと思う。
「ゲームやめてあんたばっかりって、無理だわ。」
「な…なんで?」
突然の告白に衝撃を隠せないでいる大野さんに思いを伝える。
これからも自分をコントロールできるために。

「今、例えばって想像してみたんだよね。」
「うん。そしたら?」
「たぶん病む」
「病む?そんなにゲームに依存してた?」
「違いますよ。依存しそうなのは」
目の前の彼をぎゅっと抱き締めた。
耳元で吐息に混ぜて告げる。



「智に」



今ですら、大野さんの存在は俺のなかで随分な割合を占めてしまうけど、ゲームをやめて大野さんだけに目を向けてしまったら。
たぶん、いつか、この人を。


それは恐ろしい闇だけど。
自分だけのものにするための術で陶酔してしまう。
それでもまだ狂ってない自分が制御してくれる。



「殺したいの?」
胸のなかでボソッと尋ねられる。
その声音には軽蔑も驚愕も、なにすら感情のない透明な言葉で。
逆にその意味に震えそうになる。
まるでそれが意味するように腕の中から消えてしまうような恐怖。
否定をする前に大野さんから呟かれた言葉に目を見開いた。

「うれし」


きゅっと胸のなかで小さくなる大野さんに胸が締め付けられ目頭が痛くなる。

「なんでっ!なんで、そんなこというんだよっっ」

あんたにそんな闇は必要ない。

あんたは俺の光。


光は俺の頬を両手で包んで愛しそうに目を細めて笑った。
「殺しちゃいたいほど愛してくれてるんだろ?」
「………っ………は」
「だから嬉しい」
「あんたって、ほんと………能天気、すぎる」
「ニノはネガティブすぎる」

「それに。泣き虫」

チュッと目元にキスをされた。



「愛してる。にの。俺はニノと一緒に生きていくよ。」





俺の光。
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