本棚V
□ギャップ3
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「どうしたの?翔くん」
さっきから難しい顔をしてバラエティー番組を見ている翔くんに声をかけた。
テレビからは笑い声が響いているというのに、まるでニュースでも見ているように考えている顔。
テレビとの明らかな温度差にほっとくことができなくなった。
「翔くん?」
こちらを向かない翔くんにじれて、クイクイと服を引っ張ると今度は僕をじっと見つめる。
「どうしたの?」
首を傾けるとぱちくりと瞬きをした。
「絶対、高いと思うんだよ。」
訴えるように言われてもなんのことかさっぱり分からない。
政治・経済の話だろうか。
きっと経済のことを言われても分からないだろうし、翔くんが求めるような意見など言えるはずもないが一応聞いてみることにする。
「ちょっと、これ脱いで。」
僕の質問に答えず、唐突にTシャツを脱げという。
更に訳が分からない。
「や、やだよ。何言ってんの?」
脱がないという意思表示を伝えるために、きゅっと裾を握りしめイヤイヤと首を振った。
「ほら、絶対高い。」
「な、何が?」
高いことと服を脱ぐのと何が関係するんだろう。
「智くん、脱ぐの恥ずかしいの?」
真面目な顔をして問われて羞恥心は倍増する。
「俺の前でも?いつも俺の前で裸になってるのに?」
辱しめられて顔が熱くなっていく。
「恥ずかしいに決まってる。いつも、平気だなんて思ったこと、ない」
真っ赤になった顔を見られたくなくてポフンと翔くんの胸の中に顔を埋めた。
「智くん…」
翔くんはぎゅっと僕を抱き締めて、やっぱ高いよって納得したように呟いた。