本棚V

□Let's kiss
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「最近、番組で飲むのって多くないですか?」
ついイライラして貧乏揺すりをしてしまう。
翔さんが、顎に手を当てて難しい顔をした。
「いや、ほんと。ニノの言う通り。確かに俺ら全員30代になったけど?」
「なんかそれだけじゃない気もするよな。」
長い足を組み換えた松潤も眉を寄せて、明らかに面白くなさそうである。
「えー。なんでなんでー?仕事中に飲めるんだよ?最高じゃん。」
「そうだよ。最高じゃん。ねー。」
ねー、と同じ方向に首を傾けるのは天然さんたち。
そして、俺らは盛大な溜め息をついた。




「今日は飲みすぎないように!」
大野さんの鼻先に人差し指をつきつけると、ぷくーっと頬を膨らませる。
ホントは俺より年下だろ。
「俺、そんなに飲んでないぞ。飲みたくても、いっつも、いっつもお前らに止められて、全然飲めてないんだからな。」
全然という言葉に力を込めて言った。

この人は自分のことを、なーんにも分からないんだから。
ついでに、俺たちの苦労も。

「いいですね?今日も一口、二口で終わり。仕事ですからね。」
「もー。分かってるよ。そのくらい。」
「分かってないでしょ?途中からおねむじゃない。口数は更に少なくなるし手は暖かいし。」
「そうだよ。智くん。大変なんだから、こっちは。」
翔さんが甘い顔をして大野さんを叱るから、これまた何にも堪えていない。
「なんで、翔くんが大変なの?」
口を尖らせている彼に、きっとこれ以上言っても無駄だろう。

「あんたは俺らの隣に座ってなよ。」

話を終わらせるように松潤がピシャリと言った。
大野さんは、何を分かりきったことを言うんだとでも言うような顔をした。


なーんにも分かっていないんだから。
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