本棚V

□闇世の光
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「あー。もう。人間界に行きたい!ヒロシに会いに行くー!」
「ぼっちゃん。ついこの間行ってきたばかりじゃないザマスか。」
王子は机の上に足を乗せバタバタと騒ぎ立てた。
机の上の書類や本が散らばりインクが倒れてもお構い無し。
フランケンがおろおろと零れたインクを拭き取っている。
ドラキュラも狼男もうんざり顔で眺めている。

相変わらずな王子と相変わらずな側近との光景に部屋の入り口で控えていた俺は溜め息をつきたくなった。
子供みたいな風体に利かん気な子供のような言動。
これが怪物ランドの次期王に君臨するのかと思うと世も末だ。
この度は王位継承は見送られたが、まだまだこの王子には荷が重いだろう。

悪魔界とのことも―――――

ジタバタ暴れる王子を見つめる目が自分でもきつくなったと分かる。

何千年と続いている怪物界と悪魔界との戦いも、めんどくさいと言う理由で悪魔界のプリンスと意気投合し、人間界とももっと行き来しやすくなればいいのにと口を尖らせた。
自分の感情で政治を動かすなんてあってはならないはず。

俺は悪魔を許すことはできない。
何故なら幼い頃、無惨にも両親と兄弟を奴等に殺されたからだ。
自分もいつか戦士として敵をとろうと思っていたのに、王子の気分で戦う機会を失ってしまった。

この悔しさが王子に分かるはずもない。
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