本棚V

□日本酒好きなオヤジ
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番組の収録でゲストと密会場所に選ばれたのは、なんとあの森鴎外の生家だということらしい。
そこで迎えたゲストは佐々木蔵之介。
背がすらりと高く肩幅も広い、頼もしい体躯に羨望の眼差しで出迎えた。
佐々木さんが手土産に持ってきてくれたのは日本酒だ。
日本酒好きにはたまらない名酒を5本。
ちびちびやるにしても、そこは日本酒である。
昼間から番組で酒なんか飲ませんなよー、とハンディを構えるのは私二宮。
日本酒好きな大野さんを見ると、なんとも嬉しそうに酒瓶を見つめている。

釣り好きで、酒好きで?

オヤジか。

そのオヤジはオヤジとは思えない可愛い顔で佐々木さんの日本酒のウンチクを聞いている。

「やっぱ、利き酒でしょー」

やっぱ、そうなるよね。

佐々木さんとの対戦相手を決めるために嵐でジャンケンをする。
絶対、大野さんは外したいのに。
どうしてこういう時強いのかなー。
俺を見てニパァと子供のように笑う。

やばい。
既に酔っぱらって幼児化傾向にある。
本当はこんな可愛い人、誰にも見せたくないわだけど。

佐々木さんの横でもたれるのってどうなのよ?
佐々木さんも鼻の下伸びちゃってるし。
もう終わらせなきゃ。
そう思ったのは俺だけじゃなかったみたいで。
やたらと大野さんに触れる佐々木さんに全く警戒せず頬を赤らめて、ふにゃりと笑う。
一人で座っていることができないのか、佐々木さんの体にすがっている。
見ているこっちはイライラ、ハラハラである。

「そろそろ時間なんで。大野さんも…ね。」
そろそろ離れよっか、というニュアンスを含ませた相葉さん。
「あ。もうそんな時間?」
そう言って佐々木さんは大野さんの手をしっかりと繋いだまま立ち上がろうとする。
大野さんもえ?え?と言いながら引っ張られるように立ち上がる。

「え?!大野さんも?!」
慌てたのは俺たちだ。
ちょっとどさくさに紛れて何お持ち帰りしようとしてんの?
先輩だからって許されないよ。

まてまて、と慌てて追いかける。
ぐいぐい引っ張られる大野さんは何の危機感も抱いていないのか、俺たちにバイバーイた手を振っている。

どこまでも陽気。

「あの、すいません。私たち、このあと仕事なんで」
もちろん仕事ではないのだが。
ハンディをオフにして反対の手で大野さんの手首を掴む。
相当酔っているのかポカポカと温かい。
眠そうな子供の手みたいな体温だ。
大野さんは掴んだ俺の手を見て、それから俺を見てふにゃりと愛しそうに微笑むと、あっさりと佐々木さんから離れた。

「じゃー、佐々木さん。今日は楽しかった。お酒、ごちそーさまでした。」
舌足らずな口調でペコリとお辞儀をすると、俺の腕にぎゅーっと体をくっつけた。

「そういうことなんで。お疲れさまでした。」
俺は余裕の笑みでのご挨拶。
佐々木さんは名残惜しそうに大野さんにバイバイと手を振った。


「大野さん。お酒禁止ね。」
「俺らと一緒の時だけにしろよ。」
「大御所とのときも止めて。心臓いくつあっても足らないから」
口々に言う俺たちをきょとんと見つめ、なんでーと訴える。
自分がどれだけフェロモンを振り撒いているか分かっていないのだ。

「うち、来る?」
「いくー!ニノんちいくー!」
「はい、じゃぁ。皆さんこの辺で。」

皆に羨ましそうに見送られる中、気にせず抱きついてくる。
人目を気にしなさいよ。

「ほんと。あなたはおバカでかわいいですよ。」
「それ、ほめてるー?」
「誉めてますよ。大好きってことです。」
「おれもー。ニノ。すきー!」
力加減もせずに抱きつくので体が軋んだが、その痛みも愛しかったり。

どさくさに紛れてほっべにチューをすると頬を押さえて更に真っ赤になった。

「おれもニノにちゅーする!」
折角誰もいない所で密かにしたのに、そんな大声で。

「もー。バカですねー。」

ふふっと砂糖菓子みたいに甘く笑って俺の頬にブチューとキスをした。


end
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