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まじで、ビックリした。
何かの間違いかと思って、殊更丁寧に送信ボタンを押した。
「はぁ?どういうこと?」
送信先が見つかりませんという液晶に並んだ英文を唖然と見つめた。

今日は大野さんの誕生日なのだ。
日にちが変わったと同時に送信したのに送信先が見つからないってどういうことだ?
昨日の仕事で顔を合わせたときには、アドレス変更のことなど話していなかった。
「はぁ…」
どっと押し寄せる悲しみを教えてやりたい。
ついでに沸いてきた怒りに後押しされてスマホをベッドの上に投げた。

大野さんにとって、俺はその程度なんだね。


泣きたい気分を散らすようにゲームに集中した。










「大野さん。どういうこと?」
大野さんの誕生日から二日後のこと。
楽屋のドアを開けたら松潤のイラついた声が響いた。
「ごめん…前の携帯、壊れちゃって…」
当人は松潤の背にすっぽりと隠れてしまっているが、しょんぼりした声に様子は想像できた。
「壊れて?新しくしました。それで?アドレスは?番号は?俺、なんも知らねーんだけど。」

あー、松潤も知らなかったんだ。
鞄を置きつつホッとした。
「大ちゃん。誕生日にメール、誰かから来た?」
相葉さんが苦笑しながらショボくれた大野さんに優しく問いかける。
ううん、と首を横に振る。
そもそも自分の誕生日だということも忘れてたんじゃ、とチラリと見た。
「誕生日にメール送ったんだよ?皆もそうなんでしょ?」
「智くんに送ったメール返ってきてさ。結構ショックだったよ。」
翔ちゃんが珍しくため息をついて大野さんを責めた。
「ごめんなさい…今日会えるからいいかって思って」
松潤の大袈裟な溜め息に大野さんは涙目になった。
翔くんは読みかけの新聞をバサリと広げる。
相葉さんはしょうがないなー、と苦笑してアドレス教えてよ、とスマホを弄った。
俺は。
俺はどうでもよくなって、ゲームを取り出した。
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