本棚V

□アラネツ
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今日も疲れたなーと、ぐったりしながら吊革に掴まる。
住んでるマンションは仕事場から電車で45分乗ったとこにある。
街から少し離れているから、緑も多いし住みやすく気に入っている。
ただ、さすがにぐったり疲れている帰りの電車はさすがに辛い。
空いてる席があれば、と目で追ったが残業を終えたサラリーマンがどっかりと座っている。
イヤホンから流れる音楽に耳を傾けながら、そっと目を閉じて暫しの時間を違う世界に飛ばした。

カーブに差し掛かりガタンと揺れ、背後の人と接触して目を開けた。
いつの間に満員になったんだろうかと、ちらり車内を伺うと座席は埋まっているものの、立っている人はまばらだった。
何も密着しなくても、と体をさりげなくずらした。

なのに。
数分後にはまたぴったりと後ろからくっつかれた。
全くの赤の他人との密着に鳥肌がたつ。

もしかして、と嫌な予感に硬直する。

いや、まてまて。
今日、どんな格好してたっけ?と俯いて確認する。
ベージュのチノパンに白Tにモスグリーンのカーディガン。
学生に間違われたとしても性別を間違われることはないはずだ。

けど、後ろの男の手は尻を撫でた。
グッとつり革を握り締める。

やめてくださいって言おうか。
けど、しらばっくれるだろうし。
そしたら騒ぎになって俺だってばれるだろうし。

色々考えて、自分が降りる駅までのあと僅かな時間を耐えることにした。
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