本棚V

□ギャップ
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「うっわー。体いてー」
自宅マンションに帰ると鞄を床に投げ出しコートのままソファーへダイブした。

「翔ちゃん、コート、シワつくよ」
後から入ってきた智くんがクスクス笑う。
目を閉じて鈴のような声を堪能する。

「俺、感動しちゃったよー」
「なにがー?」
智くんがコートを脱いでラックにかける一連の流れを見守る。
「智くんってさぁ。ほんと何でもできるよね。」
「えー。なんで?みんなも滑ってたじゃん。」
「いやいやいや。」
違うんだよ、みんなのとは違うんだよ。
「あー。っていうかさぁ、智くんって、まじ可愛いよね。」
「はい?」
うつ伏せになって足をばたつかせる。
思い出すだけで頬の筋肉が緩む。
「あのペンギンさんみたいな手とかさぁ。ジュニアの子みたいに幼く見えたりさぁ。」
「明らかにバカにしてるよね?」
「違うんだって。あー、もう、どう表現したらいいんだろ。そ。本当、天使みたいなんだよね。やー。もうキュンキュンしちゃってさー。」
「翔ちゃん?大丈夫?頭、うった?」
うつ伏せの頭をペシペシ叩く。
すぐ近くにある細腰にタックルを決めるとソファに押し倒した。

「ちょっと、びっくりするじゃんっ」
運動神経はいい方じゃないのにこういう時は俺って器用だなって自画自賛する。
真ん丸な目が俺を見上げる。
やっぱり天使みたいに可愛いなぁ。

「あーんな可愛い智くんをさぁ、ほとんどニノが独り占めしてたじゃん。っていうか俺に抱き付けばいいのに。いや、抱きつくべきだよね。」
ムッと口を尖らせると、呆気にとられ、真ん丸な目をしばたいた。
「翔ちゃんに抱きついたら一緒に転びそうだし。」
「否定はできません。」
「それに。抱きついたら鼻の下伸びそうだもん。」
「それも否定はできません。」
智くんは目を細めてぷふっと笑った。

「ここでは翔ちゃんが独り占めできるだろ?」
「うん!!!」
「うんって…可愛いなぁ。ゼロの時なんて格好いいのに、ギャップ萌えだよね。」
よしよしと犬の子みたいに頭を撫でられ、鼻を首筋に擦り付ける。

「ギャップ萌え死にしそうなのは俺の方だよ。」
耳をペロッと嘗めるとぎゅっと目を閉じて、嬌声を堪えようとする。
「ほら。ダンスの時は美しくって格好よく、普段は可愛くって。エッチの時は…エロくって」
「ば…か」



最後のギャップは俺だけのもの。




End
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