本棚V

□Sweet whiteday
1ページ/4ページ

あ、拗ねてるなって背中からの視線で分かる。


ゲームに没頭しすぎてると、構ってほしいってビンビン伝わってきて、しまった、やり過ぎたと反省する反面嬉しくなる。
あー、この人、まだ俺のこと好きなんだって分かるから。

でも、前はそんなんじゃなくて。
お互い不器用で。
自分に精一杯で。
辛い思いをさせていることにも対処できなかった。

あれから少しずつ、素直に我が儘を醸し出してくれる大野さんが可愛くてたまらなかったりする。
でも、大野さんが可愛ければ可愛いほど
好きになればなるほど、どくらい好きなのって確かめたくなってしまって。
言葉にしてもらえるまで粘りすぎて泣かせちゃったり、はよくある話。

「にーの。コーヒー飲む?」
「いや、今はいいです。」

何とか振り向かせようとしているのがいじらしくて。
わざと素っ気ない態度をすると、シュンとした空気が伝わってきて、思いっきり抱き締めたくなる。

「にのー。天気いーね。」
「そうですね。」
「あ。ほら。ベランダに雀、きてるよ」
「へー。」
窓越しに外を眺めはじめて、雀で寂しさを紛らわしているのか、パンあげよっかな、とか一人でぶつぶつ呟いている。


そろそろ構ってあげないと本気で拗ねちゃうかな、と首をコキッとならす。
拗ねて肝心の場面でいちゃつけなかったら嫌ですからね。
なんと言っても今日はホワイトデーですから。
仕事で一週間忙しく触れられずにいたから、禁断症状出まくりで卑猥な妄想が余裕で出来ちゃえてますから。


「コーヒーよりあんたの…って。あれ?大野さん?」

飛びそうになったやらしい映像から必死に脱出し、本物の大野さんを振り返ると、窓際にもリビングにも姿がなかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ