ORANGE days
□09好きだから
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「ソラ!」
賑わう甲板に、突如響き渡った声…
「ん?」
「何だぁ?」
丁度出航前のルフィ達と話し込んでいたソラが何事かと振り返ると、その瞳に飛び込んで来たのは先程白ひげの元へ向かった筈のエースだった。
別れる前よりも随分シャキッとしたその表情に気付いたソラは、漸く酒が抜けたのか…くらいに考えて笑顔を送った。
「話し、終わったんですか?」
「あぁ。」
あれから1時間は過ぎていただろうか…
目の前まで歩いて来たエースは、どこか真剣な眼差しでソラを見下ろすと、その頬にそっと手を添えた。
「隊長…?」
一瞬ピクリと微かに反応を示したソラ。
そんなソラを見て、つい先程の話しが蘇って来る。
今でこそ笑顔を向けてくれるソラがここまで来るまでに、一体どれ程の思いをして来たか…
そんな風に考えると、この愛しい存在が今までより一層愛しさを増した気がした。
「俺…」
次の瞬間…堪え切れない衝動にかられたエースはソラの体を引き寄せた。
「ちょっ…」
「今から言う事を良く聞け。」
これに対して驚いたのはソラだ。
強引に引き寄せられたかと思えば次は抱き締められ…
一体何がどーなっているのやら理解出来る筈もない。
その心境を表すかの様に、大きく見開いた瞳は戸惑いがちに揺れた。
「…お前は俺が必ず幸せにする。」
「な、何を急に…」
「急でも何でもいい。これは俺の決意表明だ。…お前がこの先もずっと笑ってられる様に…俺が絶対幸せにしてやるから。」
「隊長…」
「だからお前は大船に乗ったつもりで居ろ。」
抱き締められた腕の中…
まるで子供をあやすかの様に背中をポンポンと叩きながら紡がれた言葉。
相変わらず恥ずかしげもなく…だけど、好きな相手にこんな風に言って貰って嫌な気持ちになる人間はそう居ないだろう。
「…相変わらず唐突過ぎますよ。」
「そうだな。」
「時と場合って物があるでしょ…」
そうは言ってみたものの、嬉しい事に変わりはない。
一瞬緩んだ腕を抜け出したソラは、目の前に立つエースをはにかみながら見上げた。
「…見せつけてくれるなぁ、全く。」
「いいぞエース!」
「柄にもなく色男!」
「一言余計だコラ。」
何処からともなく沸き上がった歓声はエース達をこれでもかと言う程盛り上げ、甲板の上は軽くお祭り騒ぎ。
それが酷く心地好くて満足気に笑うエースと、注目されて恥ずかしさが募るソラ。
「ほら。」
「あ…」
端から見れば対照的な2人だったが、その手は誰にも気付かれない所で固く繋がれていた。
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