ORANGE days
□06潮風に包まれて
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エースが街へ降りたと同じ頃…
「さて、どこ行こうかな…」
何も知らないソラは1人街へ来ていた。
これと言った目的は無いが、船に居ても時間を持て余すだけ。
それよりもリトルキャンディでの残り少ない日を有意義に使おう…
そう考えたのだった。
「どこか見晴らしがいい場所でもあれば最高なんだけど…」
リトルキャンディを歩くのは先日の食い逃げ騒動を合わせて2回目のソラ。
街の作りなんてハッキリ言ってほとんど知らない。
どこをどう行けば何があるのか…それが分からない内は適当に歩いてみるしかなかった。
「誰かに聞いてみよ。」
先日と同じく、港の位置を頭に入れたソラは一歩足を踏み出した。
相変わらずの活気溢れた街並みに自然と表情が生き生きして来る。
しかし、そんな楽しい気分が台無しになる出来事が…
「─いやーっ!」
突然耳に飛び込んで来た叫び声。
咄嗟に振り返ったソラが周囲を見渡してみると有り得ない光景が目に映った。
「おいおい、危ねぇからコッチへ来な。」
「そ…それ以上来ないで…来たらここから飛び降りますよ…!」
「ガハハ!命は無駄にしちゃいけねーな。」
ソラの居る場所から数十メートル離れた先にある岬。
そこに居たのは今にも海に身を投げ出しそうな少女と、それに近付く男の姿…
少女の方はこの島の育ちなのだろうか…身なりはきちんとして海賊とは無縁の格好をしている。
色白で繊細で…
男が守ってあげたいと思うのはきっとこーゆー子なんだろうと思った。
一方…男の出で立ちは大きな図体に腰には二本の剣。
人を小馬鹿にした態度とモラルの無さそうな人相…
仲間を引き連れている辺り同業とは思いたくはないが、恐らくは海賊だろう。
「あいつら…」
理由はわからない。
だが、手も出せない丸腰の少女を無理矢理どーにかしよう等と言う腐った根性がソラの怒りに触れた。
ましてや相手は同じ女だ。
だからこそ余計にでも放っておけなかった。
「ちょっとあんた達。」
「あ?」
いつになく低い声でユックリ近付いて行くソラに男達の視線が集まる。
「嫌がってるでしょ、彼女。」
「誰だおめー。」
「誰だっていい。」
「ハハッ良く見りゃこれまたいい女じゃねぇか。」
男の前で立ち止まったソラは見上げる程の大男をキツく睨んだ。
近くで見ると一際大きく見える巨体。
大男はオーズで見慣れているソラだったが、長時間見上げてると首でも痛くなりそうな長身だ。
まぁそれで怖じ気付く様な玉でも無いのだが…
「酒臭い…昼間から呑んでいい身分ね。でも酒に酔って気が大きくなったからって人の嫌がる事しちゃダメじゃない。」
「ガハハッ!中々威勢のいい姉ちゃんだ!だが威勢がいいのも相手を見てからにしろよ?俺が誰だかわかってんのか?」
「知らないし興味も無い。」
「そうか、そりゃ可哀想にな。まぁあれだ…見ての通り俺ぁ今取り込み中なんだよ。相手なら用が済んでからしてやる。」
「…用?その子をどーにかしようってんなら止めなさいよ。」
「おめーに指図される筋合いはねぇ。」
男はソラの言葉を受け入れる事なく、卑下た笑みを浮かべ少女に視線を戻した。
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