ORANGE days

□03夜風に吹かれて
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夜空に浮かぶ月が水面に映し出され、ゆらゆら揺れる様はいつ見ても幻想的だ。


…そんな事を思いながら1人ぼんやりと海を見下ろすソラ。


今夜は2番隊が不寝番に当たっている為、1人見張り台に登り夜風から身を守る様に毛布にくるまっていた。


2番隊以外の隊員達はほぼ全員リトルキャンディに降り立っている今日…
船内には普段の賑やかさとは打って変わって妙な静けさが漂う。


今頃は皆、酒を浴びる程呑んでどんちゃん騒ぎしてるんだろうな…
想像したら羨ましい。


「ふぁーぁ…」


昼間の騒動やら先程のマルコとのやり取りで無駄に疲れていたソラは欠伸を1つ、寒さと眠気と戦っていた。


…と、そこに聞き覚えのある声がかかった。


「ソラ!」

「隊長…。えーと…一応おかえりなさい。」

「一応って何だ一応って。」

「それはその…まぁとにかく無事で何よりです。」


声の主に対してソラはやけに他人行儀。
そこに居たのは食い逃げの追っ手から逃げ切って帰って来たエースだった。


「遅かったんですね。何かあったのかと思って心配してたんですよ?」

「嘘だな。」

「はい、まぁ。」


ぎこちない笑みを浮かべて堂々と毒を吐くソラに、エースは苦笑いを漏らした。


「異常ねーか?」

「はい。今日はいつもに増して静かな海です。」

「そうか。」


辺りが静か過ぎるせいか、ソラの穏やかな声がやけに通る。


静かな海に静かな船内…


たまにはこんな夜もイイもんだな、なんて柄にもなく思いながら見張り台の下にドカッと腰掛けた。


「隊長。」

「ん?」


そんなエースに気付いたソラが声をかける。
呼ばれた本人は自然と上を見上げ、距離はあるものの2人は視線を合わせた。


「そんな所に座って寒くないんですか?」

「それを俺に聞くか?」

「見てるコッチが寒くなりそーだったからつい。」

「心配すんな。」


些細な事だが、自分の身を心配してくれてる事が嬉しくてエースは優しく笑った。


それを見たソラは不覚にもドキッとしてしまいそそくさと目を反らす。
不意打ちほど厄介な物はない…


しかし、そんなソラに追い討ちをかけるかの様にエースは口を開いた。


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