この恋、君色。

□〈ニ〉一つ屋根の下で
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…思い起こせば今日1日何かと厄介事が続く1日だった。


ここ数日間がやけに平和だっただけに、そのツケが一気に襲って来たとしか考えられない。


突然現れたルキアと恋次、加えて今日初めて出逢った海。
この3人を前に、一護は今日1日の出来事をぼんやりと思い返していた。


─あれは陽が沈みかけた頃…話は数時間前に遡る。


「じゃーな。」


ぶっきらぼうにそう言い放って教室を後にした一護は、そそくさと校門を潜り真っ直ぐ家を目指した。


後ろで啓吾が「カラオケ行かねぇのー?!」なんて叫んでいたが、答えるのも面倒でいつもの様に軽くスルー。


それでも懲りずに「彼女か?!彼女に会いに行くんだな?!」等と訳のわからない事を喚く啓吾に拳骨をお見舞いしてやったのは言うまでもなく…


わざとらしく嘆いている啓吾を水色に託して再び足を動かした。


何故かはわからないが、いつもに増して疲労感を感じた今日1日。


一刻も早くベッドに潜って休みたい…
そんな思いからか足取りはいつもより気持ち速め。


しかし、そう思い通りに行かないのが世の常だ。


直後、他校の不良グループに絡まれたり運悪く2体の虚と遭遇してしまったりと散々な目に遭ってしまう。


まるで苛立ちを表すかの様に雑魚相手に最初から全力投球。ものの数分で片付ける。
虚の断末魔がやけに耳について深い溜め息をついた。


(やっとゆっくり出来る…)


家まではあと数分。
足取りは自然と速まる。


(先に風呂浴びて…いや、やっぱここは飯か?でもまだ腹減ってねーしな…)


そんな事を考えながら歩いている所に、タイミング良くどこかの家から夕飯の匂いが香って来た。


(…)


特に腹が減っていた訳でも無いが、香ばしい匂いに胃袋は無意識に刺激される。


それと同時に思い浮かべたのは今頃夕飯作りに精を出しているだろう遊子の姿。
その一生懸命な姿は不機嫌だった一護の心をほんわか和らげてくれる様で、表情は徐々に弛んで行った。


(…やっぱ飯にすっか。)


角を曲がれば我が家は直ぐそこ。
この時点では一護の眉間のシワも漸く消えかかっていた筈だったのに…


「─何で一護んちなんだよ!」


恋次の馬鹿デカイ声が響いたのは、角を曲がった直後だった。


「…」


折角取り戻した良い気分が一気に崩されて行く瞬間。
一護の眉間には再び深いシワが寄せられた。


「ふざけた事をぬかすな!お前と浦原が居る無法地帯に姉様を寝泊まりさせる訳がなかろう!」


恋次に続いて届いたのは、これまた聞き覚えのある声。
それがルキアの物だと言う事は考えなくてもわかった。


嫌な予感を感じて薄暗くなって来た世界に目を凝らせば、そこには見覚えのある特徴的なシルエットが2つ…
何やら自分家の前で言い争いをしているらしい。


「あいつら何やって…」


周囲は暗がりに包み込まれる一歩手前だ。
昼間と違って大声でも出そう物なら近所迷惑、下手すれば不審者だろう。


通報でもされる前に一刻も早く2人を黙らせなければ…
そう考えた一護は舌打ちと同時に大きく一歩を踏み出した。


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