ORANGE days
□10命の恩人
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島を出てから1週間が経った、ある日の午後…
「中々釣れませんね。場所が悪いのかな…」
「んな筈ねェんだけどなぁ。」
「じゃあ餌がお気に召さないとか?」
「よし、ちょいと変えてみっか。」
「はい。」
雲1つない晴天に見回れたこの日、
モビーディックの船尾には仲良く肩を並べて釣りを楽しむソラとサッチの姿があった。
「ホントに居るんですか?その幻の魚って。」
「何だよお前、俺の話し疑ってんのかぁ?図鑑にも載ってんだ。居るに決まってんだろ。」
何でもここらの海域にしか居ない魚が居るとかで、世にも珍しい種類なのだとサッチは言う。
淡いピンクと黄色のグラデーションの鱗で覆われた体は人魚を連想させ、見る者の心を魅了してしまう程だとか…
それを聞いたソラは是非ともお目にかかりたいと釣りに参加──そして今に至る。
中々釣れない事に不満げな表情を浮かべるサッチと、今か今かとその時を待ち詫びるソラ。
あーでもないこーでもないと言い合う様子は仲の良い兄妹の様で…
その光景を少し離れた場所から見守るエースは小さく微笑み、そっと瞳を閉じた。
…こんな風に陽気な午後はつい眠気が襲って来る。
波音に混じって聞こえるカモメの鳴き声や、時折聞こえるソラ達の楽しそうな声…
そのどれもが心地好く感じて今すぐにでも夢の世界に入って行けそうな気がした。
「平和だな…」
脳裏に焼き付いて離れない可愛い彼女の無邪気な横顔…
それを思い浮かべたエースが微睡みかけた──その時。
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